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対談「情報解析を巡るトレンドと課題」第2回(VALUENEX中村×イーパテント野崎)

5月13日(月)配信

昨今のアナリティクスを巡る日本や海外のトレンドはどうなっているのか?また、日本で注目されていると言われているIPランドスケープの実態は?日本だけではなく海外でも積極的な事業展開を図っているVALUENEX株式会社CEOの中村達生さんをお招きして対談を行いました。情報解析を巡るトレンドを俯瞰するだけではなく、現在の課題や今後目指すべき方向性についても熱く語っていただきました(第2回)。

 

中村 : 今度は私から野崎さんに質問をさせてください。野崎さんが知財の世界に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか? 専門分野からするとかなりかけ離れていらっしゃいますし、就職の選択肢はたくさんあったように思いますが。

 

野崎:質問ありがとうございます。実は小学生の頃に好きだったのがエジソンの伝記で、発明ノートを書いていました。当時の夢は発明家かコックだったのですが、今のような仕事に就くとは夢にも思っていませんでした。

 

その後、間が空くのですが、高校生の頃に理工系ではなく、中国古代史を勉強したくて、史学科の大学へ進学しようと考えていたんです。

 

が、高校3年になる際に文系・理系クラスのいずれかを選択する際に、親と相談したら歴史じゃ飯食えないぞ、と言われ(笑)

 

中村:それで理系に?

 

野崎:はい(笑)ただ、中学生の時にジュール・ベルヌの海底二万里を原作にしたふしぎの海のナディアというアニメが大好きで、じゃ理系に行くなら潜水艦を作ろう!ということで理工系に進学しました。

 

父親が電力会社に勤務していたこともあって、研究室では熱流体分野を選んだんです。

 

で、中村さんからの質問にやっと回答するんですが、自分に実験は合わないな、と。むしろ、図書館にこもって過去の文献をサーベイしたり、熱流体力学で使われる無次元数を整理したウェブサイトを作ったり、と情報収集や整理、まとめる方が性に合ってると思ったんです。

 

あと、大前研一さんや堀紘一さんのような経営コンサルタントの本も好きだったので、じゃシンクタンクかコンサルを応募しよう、とそんな流れです。

 

中村:でも、シンクタンクやコンサルだと直接は知財は関係ないですよね?

 

野崎:はい。当時はまだリクルートから大学院生のための紙の就職雑誌が送られてきて、その他コンサルの中にあった三菱総研の次のページにあったのがNGBなんです。知財関係の授業も履修はしていたのですが、知財をやりたいというよりも、NGBの業務内容の中に調査・分析もあったので、それじゃMRIと一緒にエントリーしておこうか、と軽い気持ちで応募しました。

 

なので、知財やりたかったからこの業界に入ったのではなく、コンサルをやりたかったら、たまたま入ったのが知財業界だったというのが回答になります。

 

中村:じゃ、MRIも受けたんですね?

 

野崎:はい、実際は説明会を聞きに行っただけで、正式エントリーはしませんでしが(苦笑)説明会の雰囲気があまりに重々しくて、、、、

 

中村 : MRIを受けていれば、私が面談した可能性ありましたよ。発明家になりたかったという御幼少期の夢が、潜在意識に残っていて、無意識に知財業界に足を踏み入れたのかもしれませんね。NGBに入社後、知財業界のイメージは、入社前の予想通りでしたでしょうか?

 

野崎:おぉ、中村さんが面接官ですか!でもMRI受けても落ちていたと思います(笑)

 

知財業界のイメージですが、実はもともと知財志望ではなかったので、入社前のイメージはなかったんです。むしろ、入社してから、あぁ、こんな業界だったんだ、と感じた方が多いですかね。

 

最近はだいぶ変わってきましたが、最初に感じたのはクローズな雰囲気ですかね。

 

おそらく私が感じたことと中村さんが知財業界に感じていることは結構共通しているんじゃないかな、と思いますが。

 

中村 : 知財業界への関わり方により、確信度は変わるのかもしれませんが、みなさん同じような印象をもっていたのではないかと思います。それでいて、誰も言わないし、触れてはいけない雰囲気があり、そして、村社会化してゆき、他の業界や分野から取り残されてきたという経緯がありそうです。でも、2010年に始まったビックデータブーム、2016年以降の情報解析ブーム、そしてAI適用検討ブームへと繋がり、品質の良い特許文献を取り扱う知財部が、戦略室や、デジタルトランスフォーメーションなどという名称へと鞍替えが起こり始め、イメージもだいぶ変わってきましたね。

 

野崎:ムラ社会、よく聞く表現ですね。いま、2016年以降の情報解析ブームとおっしゃったのですが、2016年というのは何か注目すべきイベントのようなものはあったのでしょうか?知財業界ですと、あとで話そうと思っているIPランドスケープというキーワードが最近聞かれますが、あの言葉が日本に上陸したのは2017年だったので、1年早い2016年って何かあったでしょうか?それとも重大なイベントを忘れているのかな・・・

 

中村 : 2013年頃からアメリカと日本を行き来していたので、少々時期がずれているかもしれません。2016年はデータサイエンティスト不要の解析ツールをウリにするベンダーが各種コンファレンスで出てきた時期です。私はPredictive Analytics Worldなどに出ていました。先進的な家電製品、クラウドを用いたサービスなど、ざっといって3年半遅れで日本にブームが届いているようですね。

 

野崎:確か以前にインタビュー記事で、日本企業の分析・解析に対する考え方は3~5年遅れている、とおっしゃっていたと記憶しているのですが、やはり現時点でも3年ほどの遅れがあるということなんですね。

 

それでは、2016年から現在の2019年にかけて、日本と海外、特にアメリカ・ヨーロッパでの分析・解析における問題意識の差などはあるのでしょうか?欧米と一口にくくってもいけないので、おそらくアメリカと、ドイツ、フランス、イギリスなど国ごとに問題意識も異なると思うのですが、いかがでしょうか?

 

中村 : 私の知っている世界は、偏りがあるかもしれないという前提でお話しいたします。

 

とくに、シリコンバレーは本当にアメリカなのかと思うくらい国際色豊かな地域のため、この文化がどこの国に属しているのかは実際のところ定かではありません。ただ、世の中の先端を行っているらしいことは、過去のトレンドからも証明済みと言って良いでしょう。

 

そのような背景の中で、解析とビジネスは分業化されているが、密に連携されているようにみえます。たとえば、ライセンスを主業務にするLawyerは、時給で請け負うプロのパラリーガルに発注し、業務の効率化を計ります。その際、目的を明確にした発注を行うことにより、Win-Winの関係が成り立ちます。Lawyerにとってみれば、出てきた結果の妥当性を瞬時に理解するために解析の知識が必要ですし、受ける方のパラリーガルもビジネスの内容を理解していないと、無駄な作業を強いられることになります。

 

このため、可視化することの重要性は富に増してきているように思います。翻って日本は、研究開発部門が知財部門に任せっきり、あるいは、知財部門は仕様通りの作業はするがその結果に対する責任は回避している状況が2019年の現在でも続いている会社があるのではないかと推察します。回りくどい言い方ですみません。関係者の方々を傷つけたくないもので(笑)

 

 

野崎:おっしゃりたいこと分かります(笑)最近ですと、IPランドスケープというキーワードが登場していますが、中村さんが懸念されたような状況が増幅されていると感じています。

 

つまり、経営層や事業部門などの知財部門以外からは知財部門に「特許情報とか使うと何かできるんじゃないの?」という漠然とした要求なり期待、そして知財部門の方ではその漠然とした要求を何とかカタチにできないかと模索しているという。

 

ちなみに、2017年4月に知財人材スキル標準(Version2.0)でIPランドスケープというキーワードが登場してから、講演会やe-Patentブログなどで「IPランドスケープというキーワード自体新しいものではない」、「IPランドスケープは経営戦略の三位一体、経営に資する知財に続くトレンド」、「IPランドスケープの底流にある、知財・特許情報を経営や事業へより積極的に活用しようという考えが重要」といった趣旨のことを言ってきたのですが、中村さんはIPランドスケープについて何かご意見ありますか?

 

 

中村: 私もまったく同意見です。野崎さんもおっしゃるように、「IPランドスケープ」そのものに、何も新しいものを感じないですね。

 

また、私の出入りしているところが必ずしもIP分野ではないこともあるのですが、海外でこの言葉を聞いたことがありません。Landscape Searchなど似たような語感の言葉はよく見かけますが、こちらは、内容はもっとシンプルで、ドキュメントを広く可視化して現状を把握しましょうという内容です。

 

そもそもIPランドスケープは、特許情報だけではなく、マーケットや事業に関する情報も踏まえて、事業戦略や経営戦略に資するソリューションを提供することと定義されているように私は理解していますが、そうなると、なぜIPを冠してIPを経営戦略の中心に持ってくる必要があるのか違和感を覚えています。IPのフィールドに軸足のある日本国内の関係者が、何かの意図で創出した造語ではないかと疑っています。

 

ただ、IPランドスケープの考え自体は昔からある普遍的な内容であり、けっして間違いではないので、造語であれ、単なるバズワードであれ、知財関係者の知識の底上げと視野の拡大に役立つのであれば、このまま国内限定で普及してもらっても、問題はないのではないかと思います。

 

(つづきは第3回へ)

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