先日特許庁から「経営における知的財産戦略事例集」から発行されました。
![経営における知的財産戦略事例集](/imgsync/2019/07/経営における知的財産戦略事例集.jpg)
経営における知的財産戦略事例集
本事例集は、経営と知財を巧みに連携させて、両者の距離を縮める取り組みを実施している企業の知的財産戦略に関する事例を50以上掲載(うち海外企業は28事例)するとともに、7名の経営層によるメッセージを実名入りで掲載しています。
2007年4月に発表された「戦略的な知的財産管理に向けて-技術経営力を高めるために-知財戦略事例集」(特許庁ウェブサイトからは既に削除されているため、アーカイブのリンク)の後継版となりますが、様々な業界・業種の企業(大企業・中堅企業からベンチャー・スタートアップ)の知財戦略について、コンパクトにまとまっています。
もちろん、この事例集だけで、各社の知財戦略の詳細まで知ることはできませんが、どのような戦略があるのか把握するという点では非常に貴重な情報源だと思います。
また知財情報分析界隈でトピックとなっている”IPランドスケープ”ですが、以下のような言及があります。
【新事業の形成・拡大】
- オムロン
- 知的財産センタはCTOに対して、IPランドスケープ等も活用した知財デザインの提案をはじめ、様々な経営判断を行う上で必要な材料をタイムリーに提供している
【経営戦略の構築・実行の高度化に資する知財戦略】
- 旭化成
- 同社では、知財部門内に全社の知財戦略の立案と実行を行う「知財戦略機能」を有しており、IPランドスケープをはじめとした経営層の事業判断に資する情報を提供している
- 富士フイルム
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- 同社では、特許権に含まれる多種多様な「情報」に着目し、これらの情報を多様な公知情報と組み合わせ、経営戦略の策定に価値のある情報を知財機能から提示しており、知財機能が「インテリジェンス機能」としても機能している。
- 例えば経営層向けには、潜在的な競合企業のIPランドスケープを作成し、自社との比較を行うことで自社の強みと弱みを認識し、より成功確度の高い将来事業領域を抽出・提案している。特に、今後進出を検討する事業分野においては、事業部がマーケットから得られる情報が限られることから、特許情報に基づく分析が価値を持つ。同社は本業務を7~8年に渡り試行錯誤を繰り返しながら実施してきたことで、ノウハウを蓄積してきた。
【経営戦略とつながる知財部門の方向性】
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- 例2 知財部門を社長直下に置き、IPランドスケープを活用して経営層に示唆を出す
- 同社の知財部門は、R&D統括部門直下から社長直下の組織へと数年前に配置転換し、ミッションを変更した。これにより知財部門において経営層や事業部に対するコミュニケーションの必要性が高まった
- この結果、知財部門は経営層に業績へのインパクトが生じるような訴訟事案の報告だけではなく、IPランドスケープを活用して分析した他社戦略の共有などを実施し、経営層にとっての「インテリジェンス機能」を果たすよう努めている
- 例3 社長と直結する「CTO」と日常的なコミュニケーションを図り、経営課題を共有
- 技術力を重視する同社では、CTOが社長と直結し、技術的側面から経営課題にアプローチしているため、知財部門はCTOとの間で密なコミュニケーションをとっており、定期的に会議の開催、日常的な会話を図っている。知財部門からCTOに提示する情報は、主にCTOが経営判断等を行う上で必要な材料としている
- 知財部門では、将来の重要領域においてIPランドスケープを作成しており、その作成結果に関し、細かな気づきも含め、CTOへ提言している
まだご覧になっていない方はぜひとも一読されることをおススメします。