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11月17日
7月10日(水)配信
10~20年以上前ですと、特許情報を分析したコンテンツと言えば、日本特許庁の「特許出願技術動向調査」や工業所有権情報・研修館(通称INPIT、インピット)の「特許流通支援チャート」など、限られていました。
最近では、雑誌やインターネット上でも、数多くの特許分析記事を見かけるようになりました。
その際に留意していただきたいポイントがあります。
それは何か?
分析対象となる分析母集団の定義です。
世の中にあふれている特許分析記事・レポートの中には、分析対象母集団の素性がハッキリしないものが、たくさんあります。
今後、特許分析記事・レポートを読む際は、分析母集団の定義をぜひとも確認していただきたいと思います。
中には、結論ありきで分析母集団を定めている場合もあります。情報分析の世界では「確証バイアス」といって絶対にやってはいけないことです。
確証バイアス(かくしょうバイアス、英: confirmation bias)
認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。認知バイアスの一種。また、その結果として稀な事象の起こる確率を過大評価しがちであることも知られている。
出所:ウィキペディア
以下、具体例を用いて説明していきましょう。
私は、6月上旬に人工知能学会に参加してインダストリアルセッション「グローバル特許出願から見た人工知能に関する現状」にて、人工知能(機械学習・深層学習)についての母集団を作成して分析した結果を発表しました。
検索式は以下になります。母集団の件数としては直近20年間で約5.5万件。
データベース:Derwent Innovation
(ABD=((MACHINE ADJ LEARNING) OR (DEEP ADJ LEARNING) OR (DEEP ADJ NEURAL ADJ NETWORK*)) OR CTB=((MACHINE ADJ LEARNING) OR (DEEP ADJ LEARNING) OR (DEEP ADJ NEURAL ADJ NETWORK*)) OR ACP=(G06N002000 OR G06N002010 OR G06N002020) OR FIC=(G06N009900150 OR G06N009900153 OR G06N009900156 OR G06N009900159))
なぜ、人工知能(機械学習・深層学習)を取り上げたのか?
それは今年1月にWIPO(世界知的所有権機構)が発表した人工知能のレポート「WIPO Technology Trends – Artificial Intelligence」にあります。
このレポートを見ていただくと、人工知能関連特許出願のランキングトップ10の中に日本企業が6社ランクインしているのです。このWIPOのレポートは日本のメディアでも、日本企業がAI分野で検討していると取り上げられました(例:SankeiBiz「AI特許出願企業、日本勢が健闘 WIPO報告書 上位10社中6社占める」)
日本企業がAI分野で検討していること自体、非常に嬉しいのですが、一方で「アメリカや中国勢の出願が少なすぎるのではないか?」、「母集団の取り方が自分の想定しているものと異なるのではないか?」ということが頭の中をよぎりました。
そこで調べてみると、WIPOの人工知能のレポート「WIPO Technology Trends – Artificial Intelligence」には、Dive deeper(より深く知りたい方へ)というパートにMethodology(分析方法論)という記載があり、分析母集団の定義(より詳しく言えば、どのようなキーワード・特許分類を用いたのか)が説明されていました。
このWIPOのMethodology(分析方法論)を見て分かりました。
「WIPO Technology Trends – Artificial Intelligence」では、人工知能技術をとても幅広くとらえていたのです。
分析母集団の定義を把握しないと、このようなことが分かりません。
最後に、最近の事例からもう1つ。
7月1日に日本特許庁から「AI関連発明の出願状況調査」が発表されました。
このような調査結果・分析結果が出た際に、上のようなグラフやチャートを見ていただくのも良いのですが、ぜひとも母集団の定義を確認してください。
この特許庁の「AI関連発明の出願状況調査」ではPDF報告書があり、
のようにAI・人工知能の範囲およびその関係性および定義がしっかりと記載されています(母集団で利用された特許分類やキーワードについてはPDF報告書を参照してください)。
分析結果からインサイトを読み取ることも重要です。しかし、そのインサイトを読み取るための前提条件をしっかり把握しておかないと、せっかく得られたインサイトも無駄になってしまうかもしれません。
ぜひとも、特許分析記事・レポートを読む際は、分析母集団の定義を確認するクセをつけていただきたいと思います。
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