知財人特別インタビュー~LexisNexis IP Business Journal~

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データとAIを活用した
意思決定プロセスの構築

米国特許弁理士 / PatentAdvisor 開発者

クリストファー・L・ホルト さん

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弁理士 / エスキューブ代表

田中康子 さん

“ゲーム”の流れを変えるには

田中さん具体的には、どんなプレッシャーのかけ方があるのでしょうか。効果的な方法がありますか。

ホルトさんゲームの流れを変えるには、たとえば、1stファイナルアクションの時にAppealするのが良策です。そうすれば、多くの時間とお金を節約できます。しかしPatentAdvisorでデータを解析すると、ほとんどの日本企業は1stファイナルでAppealを申請しない傾向にあります。どの日本企業にも当てはまることですので、一度、自社の特許ポートフォリオの係属中案件を覗いてみてください。拒絶理由を4回も5回も繰り返している案件がある場合には、担当は赤色審査官でしょう。

同じアートユニットの中に緑色の審査官が存在している場合には、あなたは不運にも赤色審査官に当たったということです。悪い流れを変えるには先に述べたように審査官にプレッシャーをかけることが必要です。私には、日本でマーケティングの仕事をしている友人がいますが、米国の製品を日本で販売するため、日本の市場に最適なメッセージを発信して日本の潜在顧客にアピールすることが求められています。同様に、出願人も審査官に適したメッセージを伝える必要があるのです。

田中さん日本人にはイメージが湧きにくいかもしれませんので、具体的にはどのような表現が好ましいのか教えてください。

ホルトさん赤色審査官に対して積極的に主張する場合には、「あなたは間違っている」と言わないまでも「あなたの結論には承服できない」と言うことはできるでしょう。応答の仕方も考慮するべきですがそれよりも、出願戦略をどのように変更するかが大切です。およそ80%のアジアの企業は積極的にAppealを利用しておらず、むしろ最後の手段と考えているようです。赤色審査官には、できるだけ早い段階でAppealを申請してプレッシャーをかけるのが効果的です。

知っていましたか? 米国ではAppealを“審査を延長するための効果的な手段”として活用しています。審査を進める方法にはRCEもあるのですが、Appealしても半数はAppeal Boardに進みませんし、Appealでプレッシャーをかければ、出願人側が審査官に対して主導権を握ることにつながります。結果的に審査官が許可しなかったとしても出願人側が主導権をもっている状況で、すかさずRCEするという手段をとることもできるのです。

田中さん日本では、Appealは高額で時間がかかると思っています。でも、赤色審査官の場合にはRCEを繰り返すのは得策ではないのですね。

ホルトさんそうです、なぜなら何の指導的見解も得られず、単に担当審査官とのゲームを続けることになるからです。赤色審査官の場合には2回、3回とRCEして最後にAppealするから正しい選択をするまでに余分な時間もお金もかかる。RCEを申請してもSupervisorは深く関与しません。Supervisorに深く関与してほしい場合にはInterviewを申請して要請することが必要です。Interviewを申請する際にも日米の企業には違いがあります。米国企業はごく当たり前にSupervisorの介入を要請しますが、日本の企業は上司の介入を要請すると審査官を怒らせる結果になると勘違いしていることがあります。

“It will be nice if you have supervisor who could join us.” とリクエストすればよいのです。データを見てもらうと分かりますが、赤色審査官は、大抵5年以下の経験でSupervisorの意見なしに自分で意思決定することはできません。Supervisorの協力を得られることは出願人にとって大きなアドバンテージです。

<図表3>日本企業の緑色/赤色審査官に対するパフォーマンス分析 (クリックで拡大表示します)

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