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1月19日
3月11日(水)配信
【事件概要】
この事件は、原告が特許無効審判の請求を不成立とした審決の取消しを求めた事案である。知的財産高等裁判所は原告の請求を棄却した。
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【主な争点】
原告が特許法123条2項に規定する「利害関係人」に当たるか否か。
【結論】
被告と原告、…は、平成29年8月21日、…、次のとおりの本件和解契約を締結した。
本件和解契約2条は、「乙らは、自ら又は第三者を通じて、無効審判の請求又はその他の方法により本件特許権の効力を争ってはならない。ただし、甲が特許侵害を理由として乙らに対し訴訟提起した場合に、当該訴訟における抗弁として本件特許権の無効を主張することはこの限りではない。」と規定する。
しかるところ、2条の上記文言によれば、同条は、「乙ら」(原告、…)は、「甲」(被告)に対し、…、特許無効審判請求により本件特許権の効力(有効性)を争ってはならない旨の不争義務を負うことを定めた条項であって、原告が本件特許に対し特許無効審判を請求することは、およそ許されないことを定めた趣旨の条項である…。
そして、…交渉経緯に照らしても、同条は、その文言どおり、原告が本件特許に対し特許無効審判を請求することは、およそ許されないことを定めた趣旨の条項と解するのが妥当である。
そうすると、原告による本件特許無効審判の請求は、本件和解契約2条の不争条項に反するというべきである。
以上によれば、原告が本件特許無効を請求することは、原告と被告間の本件和解契約2条の不争条項により許されないから、原告は、本件特許の特許無効審判を請求することができる「利害関係人」(特許法123条2項)に当たるものと認めることはできない。
【コメント】
原告は、「被告が過去製品とは別の構成を有する製品に対して本件特許権を行使する場合には、特許無効審判等によって本件特許権の効力を争うことが禁止されるものではない」などと主張したが、裁判所は、本件和解契約には、「過去製品とは別の構成を有する製品に対して本件特許権を行使する場合には、原告が特許無効審判請求によって本件特許権の効力を争うことが許される旨を定めた文言は存在しない」として原告の主張を採用しなかった。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住 和之)
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