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特許 令和3年(行ケ)第10123号「食器」
(知的財産高等裁判所 令和4年5月19日)

10月5日(水)配信

 

【事件概要】
 本件発明1は本件出願前に頒布された刊行物である甲4に記載された発明(甲4記載の「こども用食器」)と同一の発明であると認めることはできないとして、特許無効審判の請求不成立審決が維持された事例。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 甲4には、甲4記載の「こども用食器」は「立面と底面とのなす角が半径略10mm弱となるよう形成されたR部」を具備していることが記載されているか。

 

【結論】
 甲4文章部分中の「φ23×H2.1(plate)」との記載から、甲4記載の「こども用食器」は、直径(φ)23cm、高さ(H)2.1cmであることを理解できるが、他方で、甲4の記載事項全体をみても、上記直径及び高さ以外の寸法についての記載はない。
 また、甲4全体写真及び甲4部分拡大写真のアングル、解像度等に照らすと、甲4全体写真及び甲4部分拡大写真から、被写体である「こども用食器」の「R部」を形成する「立面と底面とのなす角」の角度や「半径」の寸法についてまで認識することは困難である。
 以上を総合すると、甲4に接した当業者において、甲4から、甲4記載の「こども用食器」の「R部」は、「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成された」構成を有することが開示されているものと認識することはできないというべきである。

 

【コメント】
 原告(特許無効審判の請求人)は、審決取消訴訟において、甲4記載の「こども用食器」の実物と称する食器(実物食器)を甲4全体写真及び甲4部分拡大写真と同様のアングルで撮影した画像を示し、それらの画像と甲4全体写真及び甲4部分拡大写真とが一致することと、実物食器の実寸が甲4文章部分に記載された寸法(直径(φ)23cm、高さ(H)2.1cm)と一致することとを根拠として、甲4には、甲4記載の「こども用食器」は「立面と底面とのなす角が半径略10mm弱となるよう形成されたR部」を具備していることが記載されていると主張したが、裁判所は採用しなかった。
 審判で審理された無効理由は、本件出願前に頒布された刊行物である甲4に記載された発明(甲4記載の「こども用食器」)に基づく新規性欠如であり、本件出願前に公然実施された発明(実物食器)に基づく新規性欠如ではない。また、実物食器と甲4全体写真及び甲4部分拡大写真の被写体とが同一物であるかどうかが定かではないが、仮にそれらの同一性が立証されたとしても、実物食器を撮影して得た画像が甲4に掲載された写真と一致することは、実物食器の寸法を甲4から読み取れることを意味するわけではない。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小林 紀史)

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