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特許 令和3年(行ケ)第10161号「ロックウール素材及びその成形体である放射線遮蔽低減体を用いた公衆被爆防護、職業被爆防護、医療被爆防護ならびに放射性廃棄物処理」(知的財産高等裁判所 令和4年8月30日)

12月7日(水)配信

 

【事件概要】
 拒絶査定不服審判において新規性欠如と判断した審決を知財高裁が支持した事例である。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 相違点2に関して、本願発明のロックウールを「放射線の透過低減を有する」素材として用いる「放射線遮蔽基材」に係る構成が、引用発明1の「断熱材として用いられるロックウールについて、・・・密度0.050g/cmの実効線量透過率は、9.99E-01、密度0.100g/cmの実効線量透過率は、9.97E-01」という記載から実質的な相違点でないとした審決の判断は妥当か。

 

【結論】
 甲1文献の表1におけるロックウールに係る記載内容によれば、密度が0.050g/cm又は0.100g/cmのロックウールは、密度が0.030g/cmのロックウールと比べて密度が高くなるように圧縮して成形されているものであるといえ、また、密度が高くなるに伴って、わずかながら実効線量透過率が低減しているものといえる。
 そうすると、引用発明1のロックウールは、本願発明の「放射線の透過低減を有する」素材に相当するものであるといえる。そして、上記⑴で検討したところも併せると、引用発明1のロックウールは、本願発明の「放射線遮蔽基材」に相当するものであるといえる。
 以上によれば、相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。

 

【コメント】
 原告(出願人)は、本願発明の放射線遮蔽効果と、引用発明1のロックウール断熱材の放射線遮蔽効果(1%や3%)とは一致するものではなく、本件審決がこれらを抽象的に同一であると判断したのは誤りであるとも主張したが、化学分野の用途発明とは異なり、装置の構造として差異が認められない限り、本願発明と引用発明1の放射線遮蔽効果の程度の相違を指摘しても新規性は肯定されなかった。
 判決の判示事項とはなっていないものの、引用発明1に係る技術常識に反して、本願発明の放射線遮蔽効果を高める方法が明細書に記載されていない旨の実施可能要件違反も審決に記載されていたことが裁判所の判断を後押ししたものと推測される。
 なお、分割出願では、装置の事細かな構成を特定することにより、当該実施可能要件違反は指摘されることなく、特許されている。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 田村 明照)

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