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特許 令和4年(行ケ)第10117号「カップ食品」(知的財産高等裁判所 令和5年9月12日)

1月10日(水)配信

 

【事件概要】
 拒絶査定不服審判において新規性欠如と判断した審決を知財高裁が支持した事例である。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 引用発明が本願発明の「カップ容器本体の高さ方向中間位置に形成された2段の段差部」を具備しているか。

 

【請求項1】
A コンビニエンスストア等で販売され、加熱して食するカップ状容器に収納されたカップ食品であって、
B カップ容器本体(30)と、
C 前記カップ容器本体の上部を覆う蓋体(10)と、
D 前記カップ容器本体の高さ方向中間位置に形成された2段の段差部(31)と、
E 周面に前記2段の段差部に嵌合する嵌合部(21)が形成され、該嵌合部を前記2段の段差部に嵌合させることにより前記カップ容器本体の高さ方向中間位置において前記嵌合部が前記蓋体と離間した状態で内壁に着脱自在に取り付けられる中皿(20)と、を具備し、
F 前記中皿の下部の第1の空間にスープ状の第1の食材を収納し、前記中皿の上部の第2の空間に第2の食材を収納し、食に際しては、容器全体を加熱した後、前記中皿を前記カップ容器本体から外して、前記第2の食材を前記第1の食材の上に落下させることを特徴とするカップ食品。

 

 

【結論】
(カップ容器本体の高さ方向中間位置)
 第1の空間にスープ状の第1の食材を収納し、第2の空間に他の食材を収納することで、スープ状の食材と他の食材を分離状態に保持し、スープがこぼれることもなく、簡単な構成で満足のいく味を実現するというものであって、この課題の解決のためには、中皿がカップ容器本体の高さ方向の上端と下端の間の任意の位置でカップ容器本体の内壁に嵌合することで第1の空間と第2の空間が形成されればよく、カップ容器本体の高さ方向の上端と下端の間の特定の位置と解すべき理由はない

(2段の段差部)
 本件補正発明では、容器本体に「2段の段差部」の存在を要する一方、その上に、さらに、蓋を嵌合させるため等の目的により段差が形成されることを排除するものではないと解するのが相当である。

 

【コメント】
 実施態様レベルで本願発明と引用発明に一応の相違点があっても、「発明」は技術思想であるから、本願発明の課題を考慮しつつ、発明特定事項(構成要件)を解釈すれば、当該相違点は「発明」としての実質的な相違点ではないことを判示したものである。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 田村 明照)

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