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特許 令和5年(行ケ)第10002号
「光源ユニット及び照明器具」
(知的財産高等裁判所 令和6年4月25日)

8月21日(水)配信

 

【事件概要】
 本件は、無効審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が取り消された事例である。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 審決が認定した本件発明と甲3―1発明との対比における相違点の一部は相違点といえるか、また、審決が認定したその余の相違点に係る構成につき当業者は甲3―1発明及び周知慣用技術に基づいて容易になし得たといえるか。

 

【結論】
 審決は、本件発明と甲3―1発明との対比において「後者の「絶縁板13」と前者の「取付部材21」とは「部材」において共通する。」としながらも、相違点1―1―3(1)の判断において「甲3-1発明では、「絶縁板13」は、基板10を蓋部3に取り付けるためのものであって、器具本体1に取り付けるための部材は「蓋部3」である。」と認定・判断しており、本件発明1では、「器具本体1」と「取付部材21」との間に取り付けに資する構造が介在することが排除されていることを前提としている。
 しかしながら、本件発明の要旨認定のとおり、「器具本体1」と「取付部材21」との間に取り付けに資する構造が介在することを含むものであってこれが排除されていると解することはできない。
 以上を前提とすると、本件発明は、甲3-1発明のように「絶縁板13」と「取付ベース1」との間に「蓋部3」が介在する取付構造を排除するものではないし、甲3-1発明の「絶縁板13」には、LED2を配設した基板10が配設されているのであるから、「絶縁板13」が存在しなければ、LED2は「取付ベース1」に配設することができないことに照らしても、「絶縁板13」は、「LED基板22を器具本体1に取り付けるための部材」に相当するものと認められる。
 そうすると、本件発明と甲3-1発明と対比において、相違点1-1-3(1)は、相違点とはいえない。
 次に、カバー部材23に関して、本件発明では、「拡散性を有」するのに対して、甲3-1発明では、「アクリル樹脂やガラス等の透明な絶縁材料からできて」いるものの、拡散性を有するか否かは不明であるとの相違点2-1-3(1)についてみると、LED照明器具のカバー部材23が拡散性を備えることは周知技術であり、甲3-1発明において、適宜採用して相違点2-1-3(1)に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
 そうすると、本件発明は、甲3-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本件審決は、進歩性の判断において、結論に影響を及ぼす誤りがあったものといえる。

 本件発明5についても、本件発明についてと同様の判断をしている。

 

【コメント】
 被告は、本件発明における「取付部材21」は、特許請求の範囲の文言上、直接器具本体1にLED基板22を取り付ける部材として特定されており、この点に関する本件審決の認定に何ら誤りはないと主張したが、本件発明では、「取付部材21」を器具本体1に取り付けるための具体的な構成は特定はされておらず、当業者は、「取付部材21」を器具本体1に取り付けるための構成として、技術水準を踏まえて任意のものを採用し得るものと解され、カバー部材23を介在するような態様を排除するものではないと解することができるとして、被告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)

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