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12月1日
1月10日(火)配信
あけましておめでとうございます!って、もう1月10日ですね。とは言え2023年最初の記事なので、まずは新年のご挨拶から!
私は、2022年11月からIP Forceでの連載を再開して2か月ですが、本来はSNS等も含めもっと情報発信をする予定でした。きちんと目標を設定しなかったので、IP Forceでの連載は自分を戒める意味でも非常にありがたいと思っています。
皆さんは、2022年はどのような年で、2023年はどのような年にしたいとお考えですか?
私は、2023年はIP Forceを軸として、定期的かつタイムリーな情報発信をする事を目標としています。個人的な目標だと、2022年は大幅にトレーニングをさぼったので、2023年はもっと体を動かさないといけないな、と思っています。漠然とした目標だと結局トレーニングをさぼってしまう可能性があるので、具体的には、柔術の昇帯に向けた技術の向上と効率的なスパーリングをしようと心掛けています。まあ、ここで仕事と個人の目標を言ってしまったので、もう後には引けないですね(笑)。
さて、シリーズでお伝えしている「理想のドメインポートフォリオ」第3回目は「ドメイン管理の理想郷」、つまり理想的な法人ドメイン管理についてお話します。
法人ドメインマネジメントでは、自社で登録するドメインネームを把握した上でカテゴリー毎に分類する事と、第三者による類似ドメインネームの登録と使用状況を定期的に確認する事の2つが必要となる事は、前回、前々回でお伝えした通りです。自社で登録したドメインネームをかき集めると「え!?」っと思うほど多くのドメインネームが見つかる事があり、結果、ドメインポートフォリオのサイズが予想を超える事もあります。法人ドメインネームの登録は、少ないと「第三者登録による悪用」等の問題に繋がる可能性がありますが、他方、多すぎても問題だと考えます。理由の一つとして「不要なドメインネームに無駄なコストが掛かってしまう事」ではないでしょうか。
そんな時に必要となるのが「ドメイン・ライトサイジング(Right Sizing)」、要は、法人毎に適した数のドメインネームを登録しましょう、という考えです。
では、改めて、法人が理想的なドメインポートフォリオを保つには、どのような手順で登録・管理を進めるべきか確認しましょう。
■ギャップ分析・マトリックス分析
ギャップ分析やマトリックス分析で識別されたドメインネームを登録することです。普段意識する事は少ないと思いますが、法人ドメインのマネジメントを専門とする(弊社のような)会社があり、法人がドメインネームを登録する際に必要な要件(登録制限、必要書類等)がある場合に、アドバイスをします。また、同一法人が登録しているドメインネームでも、(個人向けのドメインサービスを提供する会社等を含む)複数のレジストラで登録されているケースもあり、このようなドメインネームを法人が管理ドメインマネジメント下に集約する事も出来ます。
自社が必要とするドメインネームの登録を進める一方、第三者が登録をしたドメインネームを検知し、使用状況の監視をする事も、ドメインネームマネジメントにおける重要な要素の一つです。登録状況、登録情報だけでなく、使用について確認する事が重要です。現在約4億件に迫る勢いでドメインネームは登録されており、脅威となりかねない第三者登録ドメインネームを検知するには、情報収集をする専門的な技術と脅威を判断する法人ドメインマネジメントの専門家に委ねるのが得策ではないでしょうか。
■第三者からのドメインネーム買取(譲渡)
第三者が登録しているが、積極的な使用がされていないドメインネームが対象です。ドメインネームの買取(譲渡)を実行するには、豊富な経験、価格等商業的な交渉術、そして匿名性等が必要です。ドメインネームの買取価格は、相手方に買取希望者が分かってしまうと、場合によっては一気に高騰する事もあります。経験豊富な専門家は、理想的な価格で買取できるよう交渉をします。ドメインネームの買取に向けて最初に必要なのは、フィージビリティスタディ、つまり買取交渉は実現可能であるのか、具体的には、買取交渉が成功する確率はどのくらいなのか、最終的にドメインネームを獲得する事はできるのか等を調査します。
■紛争解決処理ブランドオーナーに損害を与える、または、実際に(利益や評判を含む)ブランドオーナーの知的財産に損害を与えるドメインネームに関連します。ブランドオーナーが、第三者登録ドメインネームの獲得を実行するには、いくつかの方法があります。特に法人ドメインネームの専門家は、費用対効果のある方法での獲得の可能性やその方法をアドバイスします。多くの場合、統一ドメイン名紛争解決処理方針(UDRP)等による妥協しない交渉を行います。
ここまで、どのように自社の利益となるよう(または損害に繋がらないよう)どのようにドメインネームの登録を進めるべきか3つのポイントで話をしましたが、登録数を増やすだけがマネジメントではないと思います。
■削除のススメ
ドメインネームのライトサイジング(Right Sizing)には二つの側面があります。一つは、上述の「ドメインネームの登録と第三者からの買取(譲渡)」戦略を練る事です。そして、登録・買取戦略と同じレベルで重要なのは、登録をしたドメインネームのうち、どれが商業的価値が無く、費用の負担になっているのか理解する事、つまり不要なドメインネームの削除をする事です。とは言え、ドメインネームの削除を実行する前に、削除後に更新費用以上のリスクが発生しないか、きちんとチェックをする事が重要です。例えば、削除対象ドメインネームに登録商標との関連性や、第三者のウェブサイトにリンクが貼られているのか等を含む、複数項目での確認が必要です。
法人ドメインネームのポートフォリオが拡大したきっかけの一つに、2012年に導入された「新gTLD」があると思います。そもそもインターネットドメインは、gTLD(ジェネリック・トップレベルドメイン)と、ccTLD(国別トップレベルドメイン)の2種類で構成されていますが、新gTLDの導入により、.APPや.NYC等多くの「新しいgTLD」が誕生し、選択肢が大幅に拡大しました。
この「新gTLD」は、知的財産の保護を目的としてドメインネームを登録している法人にとっては、大きな悩みの種となりました。理由は簡単、保護を目的とした場合、法人が登録しなければならないドメインネームが圧倒的に増えたからです。登録コストだけでなく、社内における管理の手間と第三者登録監視にリソースを割かなければなりません。全て登録するのが一番良いかも知れませんが、エンドレスに登録をしてコストが拡大するようであれば、法人として正しい戦略を取れているのか気になりますよね。
■権利保護メカニズム
新gTLDの導入と共に法人の悩みを(ある程度)解決してくれたのが「権利保護メカニズム(Rights Protection Mechanism)」です。権利保護メカニズムには、Identity Digital(旧Donuts)が提供するDPML(Domains Protected Marks List)等があり、特にDPMLでは、何百もの新gTLD にまたがって、登録商標を使った文字列のドメインネーム申請を阻止する事を可能にしました。つまり、商標権者である法人に対して「商標権を持たない第三者はドメインネームの登録が出来ない」と言う安心感を与えました。
権利保護メカニズムの導入により、多くの法人は、費用対効果のある形で自社のドメインポートフォリオを適切なサイズに保つことが可能となりました。
今日だけでなく、未来を見据えて適度な数のドメインネームを登録・管理する事、そのために複数の対策を講じる事は、あらゆる規模の法人に必要です。常に進化するデジタルランドスケープの特徴の一つに、ブランドに対する脅威も絶えず進化していることが上げられます。従って、ドメインネームのライトサイジングは「一度やったら終わり」という事ではなく、常時実行する必要があると言えます。会社で登録したドメインネームは、定期的な評価を行い、すべてのドメインネームの価値の変化を確認する事が重要ではないでしょうか。
次回は、法人ドメインマネジメントを実行する際の、適切なパートナーは何を基準に選ぶべきか、お話ししたいと思います。
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