シリーズ「特許庁に突撃!」~第2回 「デザイン経営」について、聞いてみた 後編 ~

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最近……、活発ですよね?
 特許庁の広報活動・知財普及活動。
中の人に聞いてきました!

第2回 「デザイン経営」について、聞いてみた ~ 後編 ~

特許庁 デザイン経営プロジェクトチーム インタビュー

インタビュアー:知財ポータルサイト IP Force 成田浩司

コストメリットも

成田お話を伺っていると、デザイン経営プロジェクトは、議論を発散させていくプロセスがあったり、まずは実践してみて失敗したら見直すというスタンスに立つものだったりすることで、コストの面では高くつくやり方なのかなとの印象も受けました。実際に取り組んでみて、そのあたりはどうでしたか?

今村さん私は、特にコスト高な取り組みだとは感じませんでした。失敗しないように時間をかけて着実に議論を進め、石橋を叩いて渡るように実行するようなやり方よりも、より早いタイミングで実践し、失敗したならばそれをもとに改善してまたそれを実践する、という形を繰り返すやり方のほうが、プロジェクトは早く実現するのではないかという気さえします。

もちろん、行政の仕事ですので、失敗が許されないものもあります。デザイン経営のプロセスにはあわない施策も当然あるでしょう。

ですが、たとえば実施する前に3年間ぎっちり議論して、予算を取ってから取り組むといったスタイルに比べて、スピード感を重視してやってみて少しうまくいかなかったので改善する、次の方法に乗り換えるといったデザイン経営のスタイルが、トータルでみたときにコスト高になるとは思いません。

デザイン経営プロジェクトチームの活動の様子

デザイン経営プロジェクトチームの活動の様子(提供:特許庁)

外山さんスタートアップ向けのホームページも、まさにそうしたやり方でつくったページ(「広報の人に聞いてみた〜前編〜」参照)で、やってみたらユーザーから非常に好評でした。それをコストとみるのか、サービスが改善されてよかったとみるのかは違う問題なのではないかと思います。

成田なるほど。アジャイル型で開発したページでしたね。

ところで、行政として絶対に失敗できない部分があるというお話ですが、それがジレンマになっている面もありそうですね。失敗してもいいから早くやったほうがいい部分と、絶対に失敗できない部分と、それぞれ両方があるのだけれど、行政の場合はやはり後者の性質が強いために、本来なら必要なさそうなところまでガチガチに作り込んだり、時間をかけて完璧なものにしようとするという方針をとりがちなのではないかと感じます。

今村さん確かにそういう面はあるかもしれません。「100%完璧にしなければいけない行政」という固定観念のようなものができてしまっていると、何に関しても「そこまでしなくてもいいのに」というところまで完璧にやってしまう優等生主義のような行動原理に支配されるようになってしまいます。

しかし、それではイノベーションは起きにくいでしょうし、世界からどんどん遅れていくことになりかねません。なんとなく日本に元気がなくなってきている現在の状況にもつながる話なのかなという気もします。

スタートアップの人たちと話すと、失敗を認める社会、失敗してなんぼという社会でなければ、なかなか新しいことにはチャレンジできないと言っているのを聞くのですが、確かにそうかもしれないなと感じています。

成田そうですよね。行政として致命的な失敗、誰かが不幸になってしまうような失敗は避けなければならないと思いますが、ある程度失敗ありきで「これは100%ではなく、80%です」というほうを選択したほうが、世の中の進歩が早まるし、国民にとってもそのほうが利益になる、というケースもあるのだと。日本の国民の間でそうした考えが少しずつ浸透していったらいいなと思います。やはり、日本では長年にわたって減点主義のような考え方が蔓延していたと思いますので。

前編はこちら

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