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意匠 平成29年(ワ)第5108号「トレーニング機器」意匠権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所 令和元年12月17日)

5月20日(水)配信

 

【事案の概要】

 原告は、被告意匠は、本件意匠(登録第1536247号)に類似し、その実施は本件意匠権を侵害するとして、差止請求及び損害賠償請求を行ったが、裁判所はその請求を棄却した。本件意匠及び被告意匠に係る「トレーニング機器」は、人体に接触させて使用し、筋肉に電気的刺激を与えるEMS商品に属するものである。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【判決理由とコメント】

 両意匠の類否判断について、両意匠はその基本的構成態様において①本体が薄いシート状であり、上下各1か所、左右各2か所の切込みがあって、6枚のパッド片を結合したような形状である点、②6枚のパッド片は、左右2列、上下3段に配置され、左右は対称である点、③本体正中央部に、略円柱状の操作部が設けられ、その背面に電池部の蓋が設けられている点、④各パッド片の背面に電極が設けられている点を共通にし、この基本的構成態様は要部に含まれるとした。しかし、要部はそれだけではなく、差異点に係る具体的態様である各パッド片の形状、各パッド片の結合方法(向き)、各パッド間の切込みの形状、深さも含まれるとして、両意匠は要部において異なるから美感が異なり類似しないと判断した。

 なお、被告意匠に係る登録意匠(登録第1593189号)があり、その登録に対しては、本件意匠を引用意匠とする無効審判が請求され、非類似として請求不成立の審決がなされて知財高裁もその審決を支持した(平成30年(行ケ)第10169号、本誌201910月号で紹介)。また、本件意匠に係る原告商品の形態について、不正競争防止法211号の周知商品等表示該当を理由とする仮処分の申し立てが認められているが(東京地裁 平成29年(ヨ)第22023号)、本判決では、不正競争防止法上の広義の誤認混同は意匠法の律するところではないとしている。

本件は、被告意匠について意匠登録がなされ、その無効審判の不成立審決が知財高裁で維持されたことも影響しているかと思われる。

 

【本件意匠】

 

【被告意匠】

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 佐藤 英二)

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