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1月19日
12月2日(水)配信
【事件概要】 発明の進歩性を否定した拒絶査定不服審決が維持された事例。
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【主な争点】 相違点1(構成D1につき、表示を要求する対象が、本願発明においては、「装飾オブジェクト」であるのに対して、引用発明においては、リアルタイムに反応する「キャラクタ動画」である点。)の容易想到性の判断誤りの有無。
【結論】 審決は、引用発明に甲2記載の技術を適用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは容易想到である旨判断した。そして、被告の主張に照らすと、ここでいう「適用」は「置換」ではなく「追加」を意味すると解されるので、以下、この前提で判断する。
原告は、甲2には、視聴者から配信者へギフトを贈ること(ユーザギフティング)が動画配信中に行われるとの記載はないので、引用発明に甲2記載の技術を追加したとしても「動画配信中に行われた表示要求に応じて、装飾オブジェクトを表示する」という本願発明の構成には至らない旨主張する。しかしながら、甲2には、CGキャラクタへのユーザギフティングを動画配信中に行うことについての記載はないものの、これを排除する旨の記載もなく、この点は、配信時間の長さ、ギフト装着のための準備、予想されるギフトの数等を踏まえて、配信者が適宜決定し得る運用上の取り決め事項といえるから、甲2のユーザギフティング機能において、CGキャラクタが装着するための作品を贈る時期は、配信開始前に限定されているとはいえない。したがって、引用発明に上記ユーザギフティング機能を追加することによって、相違点1に係る「前記動画を視聴する視聴ユーザから前記動画の配信中に前記動画への装飾オブジェクトの表示を要求する第1表示要求がなされる」という構成を得ることができる。
【コメント】 審決では、相違点1は、表示を要求する対象についての相違点であるとされているように見えるが、原告も判決も、配信要求のタイミングを含む構成D1の有無を相違点1と捉えたように見え、判決の相違点1についての判断は、審決を離れた判断のようにも見える。本判決は、人為的取り決めに属する事項には進歩性が認められにくいことを示す例のようにも思われる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)
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