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12月1日
9月15日(水)配信
【事件概要】
拒絶査定不服審判において追加された発明特定事項について、新規事項に当たるとした審決が支持された事例。
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【争点】
補正により追加された「前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との新たな発明特定事項が新規事項に該当するか否か。
【結論】
当初明細書には「特定のアイテム」について、アイテム付与部によって付与されるアイテムとは異なる種類のアイテムであり、アイテム付与部により実行されるアイテム付与ステップによってユーザに付与された「アイテム」が、アイテム変換ステップにより変換され、特定アイテム付与ステップによりユーザに付与されるものであって、上限なくユーザが所持可能とすることができるものであると記載されている。そして、収納上限が設けられているアイテムボックスに「特定のアイテム」を収納すると、「特定のアイテム」を上限なくユーザが所持することは不可能であるから、当初明細書に接した当業者は、「特定のアイテム」は、「アイテムボックスに収納して保持する」ものではないと理解すると解される。そうすると、「『特定のアイテム』を『アイテムボックス』に収納して保持すること」を意味する「前記特定のアイテムを、前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との新たな発明特定事項は、当業者によって当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内のものであるとはいえない。
【コメント】
審決は、新規事項の追加がある旨の判断に加えて、進歩性が欠如している旨の判断も示した。原告は、その両方についての判断の誤りを主張したが、判決は、新規事項追加の判断に誤りが無いことのみを示して原告の請求を棄却した。原告は進歩性欠如の判断に対しては、新規事項追加に該当するとされた構成とは異なる構成に基づく非容易想到性のみを主張しているように見え、審判段階において新規事項の可能性のある構成を維持した対応には疑問が残る。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)
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