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特許 令和3年(行ケ)第10095号「マルチ内腔構造を備えるカテーテルアセンブリ」(知的財産高等裁判所 令和4年6月2日)

8月3日(水)配信

 

【事件概要】
 本件は、拒絶査定不服審判において、「本件審判の請求は成り立たない」とした審決が維持された事例である。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 主な争点は、内腔の断面形状に関し、本願発明が、第3の内腔に隣接して配置される凹部、第1および第2の角部を備え、凹部は、第1の角部側にオフセットされた形態で第1の角部と第2の角部との間に介在する構成とする点が容易か否かである。

 

【結論】
 引用文献1には、カテーテルの第1の管腔と第2の管腔の断面形状について、「円形、D字形断面形状、またはそれらの任意の組み合わせを含む1つ以上の断面形状を有することができる。」という記載があり、カテーテルの内腔の断面形状が様々な形状を選択し得ることは、技術常識でもあるから、引用発明1において、円形以外の断面形状を採用することの動機付けがあるといえ、また、カテーテルの外径と内腔の断面形状はトレードオフの関係にあることが技術常識であることを踏まえると、カテーテルの外径を小さくする必要がある場合には、円形ではなく、D形状等その他の形状を採用するのであって、そのような選択は、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計的事項の採用というべきものであり、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないというべきである。そうすると、引用発明1につき、カテーテルの外径を小さくする必要がある場合には、具体的な形状として、第1の管腔と第2の管腔の断面に、第3の管腔を避けるための凹部形状を設ける断面形状を採用して、相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者にとって容易になし得ることであったと認められる。

 

(本願発明)

 

【コメント】
 原告は、引用文献1には、横長の断面構成においては、管腔の断面形状について、円形が他の形状よりも効率的であることが明記されており、このような記載に接した当業者が、あえて効率が悪くなるような、円形以外の、凹部を有するような形状を採用することについては、阻害事由があると主張したが、判決は、引用発明1の具体化に当たり、カテーテルの外径を小さくする必要がある用途においては、内腔の断面積を確保するためには、円形の断面形状を採用し得ないのであって、その余の断面形状を選考することは当然であり、円形以外の形状を採用することについて阻害事由があるとは認められないとして原告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)

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