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特許 令和3年(行ケ)第10136号等「半田付け装置、半田付け方法、プリント基板の製造方法、および製品の製造方法」(知的財産高等裁判所 令和4年8月31日)

10月19日(水)配信

 

【事件概要】
 本件発明1等は甲1発明に基づいて容易に想到し得たとはいえないとして、特許無効審判請求に対する審決のうち特許を無効とした部分を取り消した事例。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【主な争点】
 甲1発明において、フラックス含有量1.0wt%の半田片を採用することが容易想到といえるか否か。

 

【結論】
1)甲1発明は、フラックスを含有する半田を用いることを前提としているものと認められるが、フラックスの含有量がどの程度の半田を用いるのかについては、甲1に記載又は示唆はない。

2)フラックスの含有量を1wt%とする半田は、本件出願日当時、やに入り半田の市場において普通に流通していなかったものと認めるのが相当である。

3)甲1には、ランドに接地した糸半田が貫通孔の周壁から輻射熱、伝導熱及び対流熱により加熱され、遜色なく溶解され、より的確な半田付けが可能になった旨の記載はみられるものの(段落【0023】及び【0042】)、溶融した半田が必ず真球にならないまま停止すること、すなわち、溶融後も半田がノズルの内壁に当接し続けることにより半田片及び端子が十分に加熱されることについての記載及び示唆はないから、甲1に接した当業者にとって、溶融した半田が必ず真球にならないとの構成が解決しようとする課題及び当該構成が奏する作用効果を知らないまま、当該構成を得るためにフラックスの含有量が1wt%の半田をわざわざ採用しようとする動機付けはないものといわざるを得ない。

4)以上によると、使用する半田に含有されるフラックスの量についての記載及び示唆がない甲1に接した当業者にとって、甲1発明においてフラックスの含有量が1wt%の半田をわざわざ採用し、溶融した半田が必ず真球にならないとの構成を得ることが容易になし得たものであったと認めることはできず、その他、当業者が甲1発明に基づいて溶融した半田が必ず真球にならないとの構成を得ることが容易になし得たものであったと認めるに足りる証拠はない。

 

【コメント】
 審決において引用した甲第10号証(日本工業標準調査会作成の「日本工業規格 やに入りはんだ」(平成18年))には、やに入りはんだの規格としてフラックス含有量が1.0wt%から6.0wt%までの1.0刻みの6種類の半田が規定されていた。しかし、フラックス含有量1.0wt%の半田が現実的に市場に普通に流通していなかったものであったことなどから、甲1発明において当該半田を採用する動機付けが存在しないと判示された。JISで規格化された物であるからといって直ちに適用容易とされるものでなく、相応の動機付けは必要であるということであろう。当該半田が市場に普通に流通していたものであったとしたら、どのような結果になったか興味深いところである。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 和田 雄二)

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