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特許 令和3年(行ケ)第10090号「噴射製品および噴射方法」(知的財産高等裁判所 令和4年8月4日)

1月4日(水)配信

 

【事件概要】
 特許権者が請求した訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められず、審決には訂正要件の判断の誤りがあるとして、訂正を認めて特許無効審判の請求は成り立たないとした審決が取り消された事例。
判決要旨及び判決全文へのリンク

 

【争点】
 請求項1の「噴射製品」及び請求項3の「噴射方法」の各記載事項に、それぞれ「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項を加える訂正(訂正事項1及び2)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものか。

 

【結論】
 本件明細書には、「粘膜への刺激の低減」の作用効果は、本件訂正前の請求項1の「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され」との構成又は本件訂正前の請求項3の「前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり」との構成によって奏することの開示があることが認められる。一方で、本件明細書には、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成にした場合であっても、「粘膜への刺激の低減」の作用効果を奏しない場合があることについての記載も示唆もない。
 そうすると、訂正事項1及び2により加えられた「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項は、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成によって奏される作用効果を記載したにすぎないものであるから、訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1及び3の各発明に係る特許請求の範囲を狭くしたものと認めることはできない。
 したがって、訂正事項1及び2は、「特許請求の範囲の減縮」…を目的とするものと認めることはできない…。

 

【コメント】
 被告(特許権者)は、訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1及び3の各発明の特許請求の範囲について、少なくとも用途又は作用を限定しているから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである旨主張したが、裁判所は採用しなかった。
 請求項の記載に「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という記載を加える訂正は、発明特定事項を直列的に付加する訂正であり、形式的には、特許請求の範囲を減縮している。しかし、付加された発明特定事項が、訂正前の発明によって必然的に奏される作用効果である場合、訂正前の発明から除外されるものが存在しないことになるから、訂正前後の発明に実質的な差異は生じない。そのような訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことは、当然といえる。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小林 紀史)

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