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特許 令和4年(行ケ)第10094号「足裏マット、中敷き、及び靴」(知的財産高等裁判所 令和5年5月16日)

8月9日(水)配信

 

【事件概要】
 本件は、拒絶査定不服審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が維持された事例である。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 本願発明の、前坪取付孔に関し、「少なくともいずれかの趾股が位置する周囲の領域において、足の長さ方向及び足の幅方向にそれぞれ複数有する」(相違点2)が容易か否か。

 

【結論】
 本願発明は、個人差による足の幅サイズや足指の長さ等の違い、又は成長による変化に対応する位置に前坪を取り付けることができる中敷き及び靴を実現することを課題とし、この課題を解決するために、相違点2に係る構成を採用したものである。
 甲1発明は、前坪の位置を個人の足に合わせて適切に調節する方法に係るものであって、複数の挿通開口を有する形態である甲1発明においても、複数の挿通開口は、前坪の位置を個人の足に合わせて適切に調節するための構成であるといえる。甲2には、靴中底に、突起具を取り付けるための差し込み穴が前後左右に平面的に広がって複数設けられていることが記載されており、甲2技術についても、足先と靴との摩擦が生じなくなるよう、靴及び足の寸法や形に合わせ、突起具を適切な位置に調節するとの技術思想が示されているといえる。そして、趾股の位置について、前後方向だけでなく左右方向にも個人差があることは、技術常識であると認められる。そうすると、甲1に接した当業者において、前記技術常識等を踏まえ、前坪の位置を個人の足に合わせてより適切に調節するため、突起具を適切な位置に調節するとの技術思想に係る甲2技術を適用して、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(本願発明)

 

【コメント】
 原告は、甲2に「趾股が位置する周囲の領域における幅方向に差し込み穴が複数設けられている」ことの記載がないと主張したが、判決は、甲2の第2図によると、複数の差し込み穴が趾股が位置する周囲の領域における幅方向に複数設けられていると認めることができる上に、そもそも、甲2技術は、靴中底に、足の指間等で支える突起具を取り付けるための差し込み穴を前後左右に平面的に広がって複数設けることにより、靴及び足の寸法や形に合わせて使用できる足先靴擦れ疲れ防止具と認定されているものであって、甲2の複数の差し込み穴が「趾股が位置する周囲の領域における幅方向に」ついてのものであるか否かは、認定判断を左右するものではないとして原告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)

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