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1月26日
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2月4日(月)配信
先週(1月28日〜2月3日)の知財業界では、週末に開催された米中貿易交渉における知財保護の問題などをめぐるやりとりに大きな関心が集まった。同会合で両国の溝は埋まらず合意には至らなかったものの、米中がトップ会談によって期限までの問題の解決を模索していると複数のメディアが報じた。米中関連のニュースではこのほか、週初に米司法省がファーウェイを企業秘密窃取などの疑いで起訴する動きもあった。
国内では、2月1日に日欧EPA(経済連携協定)が発効したことを受け、経済効果への期待に加え、日欧間で知財保護のためのルールが幅広く整備された点などが改めて評価された。
国内ではこのほか、5月1日の「改元」を前に、新旧の元号を商標登録できないよう特許庁が商標の審査基準を改定したことなどが話題となった。さらに週末には、著作権法の改正をめぐる政府方針に注目が集まる中、日本経済新聞が海賊版サイトに警告画面を表示させる仕組みの導入などを政府が検討していると報じた。
現地時間1月30〜31日にワシントンで行われた米中の閣僚級による貿易協議では、知財保護や中国による技術移転の強制などをめぐって意見が交わされたが、合意には至らなかった。中国側からは劉鶴副首相らからなる代表団、米国側は米通称代表部(USTR)のライトハイザー氏らからなる代表団がそれぞれ交渉に臨んだほか、31日にはトランプ米大統領が劉鶴氏と面会した。その後の会見で、トランプ氏は「技術移転、知的財産権で大きな進展があった」と発言。さらに2月2日付でテレビ朝日が報じたところによると、トランプ氏が米紙とのインタビューで、米中の交渉期限となる3月1日までの合意について「十分可能だ」との見方を示したほか、知財保護の問題を巡っては、最終的に習近平中国国家主席とのトップ会談で解決に持ち込むことに意欲を見せたという。中国外務省も、米国との対立に首脳会談で決着をつけたい考えを示したと伝えている。
関係筋の話をもとに各メディアが報じたところでは、知財や技術移転の問題に関し、米中の立場には依然として隔たりがあるもよう。ロイター通信は現地1日付で、カドロー米国家経済会議(NEC)委員長が米TVに対し、「まだ書面にする用意は整っていない」「なお多くの厳しい課題が山積している」とコメントしたことを伝えている。
米中貿易協議の前日には、中国の一部メディアが、中国政府が外国企業の技術を中国側に強制移転させることを禁じる外商投資法案を3月に開催する全人代で成立させる見通しだと報じた。米国が求める技術移転の強要を禁ずる法律を早期に整備することで、貿易協議を有利に進めたい考えだったとみられている。
個別の企業をめぐっては、現地1月28日に、米司法省がファーウェイと孟晩舟副会長件最高財務責任者(CFO)を米国の対イラン制裁に違反する取引に関与した疑いで起訴した。起訴内容には、米通信大手Tモバイルがスマートフォンの品質試験に使用していたロボットに関する技術をファーウェイが盗んだとする企業秘密の窃盗疑惑なども含まれている。
さらに30日には、アップルが持つ自動運転技術の機密情報を盗んだ疑いで、中国籍の元同社社員が米連邦捜査局(FBI)に逮捕・起訴されていたことがわかった。
一方、日本に関連するニュースでは、2月1日に日欧EPAが発効し、世界最大級の自由貿易圏が生まれた。関税撤廃に加え、電子商取引や知財保護を含む幅広い分野のルールを整備した内容で、各国で貿易の保護主義的な傾向が強まり、中国で技術移転の強要などが続く中で、自由貿易の推進や企業秘密の保護などで世界を主導する役割を果たすものとの期待が寄せられている。
国内ではこのほか、5月の改元を控え、特許庁が1月30日に「商標審査基準」を改定し、一部の例外を除いて新元号や「平成」「昭和」などの旧元号を商標登録できないよう明文化した。新元号は4月1日に発表される予定だが、従来の基準では平成中であれば新元号の商標登録が可能な余地が残されていたという。
著作権関連では、日経新聞が2月1日付で、「海賊版サイト」対策として、利用者が海賊版サイトを視聴しようとした際に「アクセス警告方式」による警告画面を表示させる仕組みを政府が導入する方針だと報じた。著作権侵害に罰則規定を設ける法整備もあわせて進める。ブロッキングの法制化は、これらの対策が効果不十分と判断した場合に検討するという。
著作権絡みの話ではこのほかに、集英社が海外で氾濫する海賊版の対策として、外国人読者向けに人気漫画をネット閲覧できるサービスを28日に開始した。広告収入による収益化を図り、その一部を作者に還元する。
さらに同日、著作権者に無断でイラストが投稿されたまとめサイトにサービスを提供していた米IT企業「クラウドフレア」に対し、東京地裁が著作権侵害を理由に画像削除と発信者情報の開示を命じた。同事案では、著作権者の男性がクラウドフレアに対して発信者情報の開示などを求めた仮処分を申し立てていた。
国内企業に関連する話題としては、31日に世界知的所有権機関(WIPO)が、AI技術の特許に関する初めての報告書を発表。特許を出願した上位企業として、3位に東芝、5位にNECが入るなど、上位10社中6社を日本企業が占める形となった。
このほか、ソニーが29日に炭素材料「トリポーラス」のライセンス供与を1月から開始すると発表した。リチウムイオン電池の開発過程で発明した素材で、特定の物質に対し既存の活性炭より高い吸着性を持つといい、ソニーが基礎から応用に至るまでの特許を取得している。
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