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11月24日
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2月18日(月)配信
先週(2月11〜17日)の知財業界では、国内における特許訴訟制度の見直し案に関連して、特許庁の知的財産分科会の小委員会が、特許侵害訴訟で被告側の工場に裁判所が指定した専門家が立ち入る「強制力のある査察制度」の導入を検討する方向で、報告書を取りまとめたことが注目された。
このほか、文化庁の著作権分科会で、海賊版サイトへの対策としてインターネット上のあらゆるコンテンツを対象に権利者に無断でダウンロードすることを違法とする最終報告書が委員によって了承された。
インターネットに絡む著作権問題では海外でも大きな動きがあり、欧州連合(EU)などが現地時間13日の会合で、グーグルなどのIT大手に対し、ニュース記事の詳細や動画などを配信する際には権利者に使用料を支払うよう義務付ける方向で政治合意し、14日に発表した。
米中の貿易交渉では、中国・北京で閣僚級の交渉が行われたが、知財・構造問題をめぐる対立では折り合うことができず、交渉は次週に持ち越された。
国内では、特許訴訟制度の見直し案について議論を重ねてきた特許庁の知的財産分科会特許制度小委員会が15日、その結果をとりまとめた報告書を公表した。焦点のひとつとなっている「証拠収集手続の強化」に関しては、強制力のある査察制度の導入を検討していることが明記された。特許侵害訴訟において、原告側が侵害されたことを立証しやすくするために専門家が被告側の工場などに立ち入って証拠を収集する制度で、特許侵害で「泣き寝入り」せざるを得ないケースが多いと言われる中小企業の要望を受けた措置だ。ただ、これまで重ねてきた議論の過程で、営業秘密の漏洩リスクなどを懸念する大企業を中心に反発も多い制度とされる。
検討されている証拠収集制度は、被告側の工場などで侵害行為があったとされる場合、裁判所が必要と判断したケースで、裁判所指定の専門家が工場などに立ち入り、報告書を作成、提出するというもの。今回の案では、被告側の営業秘密保護の観点から、立ち入りを提訴後のみ可能にする、相手方による不服申し立て手続きを認める、裁判所が指定した専門家に対する当事者からの意義申し立てを認める、立ち入った専門家による秘密漏洩に対して刑事罰を設ける、といったルールを整備することなどを提案している。
国内ではこのほか、13日の文化審議会著作権分科会で、インターネット上のあらゆるコンテンツについて、著作権を侵害していると知りながら権利者の許可なくダウンロードすることを全面的に違法とする報告書が了承された。これまでは違法とする対象を音楽・映像に限定していたが、対象を漫画や写真、論文などのすべてのコンテンツに広げるほか、「スクリーンショット」も違法行為とみなす内容となっている。悪質な行為に対しては刑事罰も課す方針だ。このほか、ネットユーザーを海賊版サイトに誘導する「リーチサイト」の規制も盛り込まれた。
文化庁は、開会中の通常国会に報告書をたたき台とした著作権法の改正案を提出する予定。もっとも、専門家や有識者の間からは、ネット利用や二次創作活動への萎縮を招くのではないかと懸念する声や、実質的に海賊版対策として機能しないといった批判が挙がっている。
海外ではEUが現地時間14日、EU加盟国と欧州議会が、インターネット上の著作権の保護強化策として検討してきた著作権法の改正案について政治合意したと発表した。グーグルやユーチューブなどの「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業が、報道機関によるニュースの詳細を掲載したり音楽や動画をネット配信したりする際に適切な使用料を著作権者に支払うことなどを義務付ける内容。これらの巨大プラットフォーマーには、著作権を侵害するコンテンツがネット上に掲載されるのを未然に防ぐ責任があることも明確にされた。
今回、政治合意した改正案は、欧州議会本会議の承認を経て成立する。早ければ3月にもEU著作権法の改正案として採決する見通しで、その後、加盟各国が2年以内に国内法を整備し、施行する流れとなる。
米中貿易交渉については、北京で11日からの次官級会合に続き、14〜15日に閣僚級会合が開かれたが、知的財産保護や構造問題における溝は埋まらなかったとされる。一部報道では、中国が14日に米国製半導体の輸入を6年間で2000億ドル(約22兆円)まで増やすことを提案したとされるが、焦点となっていた知財問題や技術移転の強要などに関する問題では交渉が難航した模様。米中は今週も、米国ワシントンで協議を続けることとなった。
15日の協議終了後、習近平中国国家主席はライトハイザー米通商代表らと面会し、今回の協議について「重要な進展があった」と評価した上で、事態打開に向けた首脳会談に意欲を見せたという。米中間では、2日間の協議の成果について覚書を作成していくことで合意している。ウォール・ストリート・ジャーナルは現地15日付で、関係者の話として、覚書の形でまとめられた合意内容がトランプ米大統領と習氏による首脳会談での最終決着に向けた枠組みになる可能性があると報じている。
海外ではこのほか、アップルが米国時間14日、クアルコムとの訴訟問題の影響で2018年からドイツ直営店で販売が差し止められていた旧式モデル「iPhone7」と「iPhone8」の販売を再開すると発表した。アップルは2018年12月、ドイツでクアルコムが同社に対して起こした特許侵害訴訟で敗訴。判決では、クアルコムによる、iPhone7とiPhone8の一部が同社の特許を侵害しているとの訴えを認め、インテルの半導体を搭載した一部製品のドイツ直営店などにおける販売を差し止めていた。このため、アップルが今回販売を再開するのは、クアルコムの半導体を搭載した製品に限られるという。
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