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11月24日
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6月17日(月)配信
先週(6月10日〜6月16日)は、製造業者における優越的な地位を濫用した知的財産・ノウハウの搾取などの実態を調査した結果が公正取引委員会によって公表され、関心を集めた。製造業者約3万社を対象に実施された同調査では726件の問題事例が報告された。さらに、大企業と比べて中小企業では、契約締結時に知財などの取り扱いについてチェックできる担当者や外部の専門家がいないケースが多い点などが指摘された。
がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許料をめぐる問題では、京都大学の本庶佑教授が共同通信社とのインタビューで、小野薬品工業を提訴するか否かについて7月にも最終判断する考えであることを明らかにしたと伝えられた。
公正取引委員会は14日、「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的な地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」を公表した。事業活動における知財保護の重要性への意識が高まる中、有識者から、優越的な地位にある事業者が取引先の製造業者からノウハウや知財を不当に吸い上げているといった指摘が複数寄せられたことを受け、実態調査のために行ったもの。中小の事業者を中心に製造業者3万社を対象に実施し、約半数から回答を得た(回答率52.9%)ほか、ヒアリング調査を122件実施した。この結果、問題となる事例が726件報告された。
726件のうち、もっとも多かった事例は、「製品を納めるだけの契約だったのに、レシピ、設計図面、3次元データ等の契約に含まれていないノウハウ・知的財産権まで無償で提供させられた」というもの。次いで多かったのが、「取引に伴い、対象商品にかかわる共同研究開発を行っていたところ、主に自社のノウハウや知的財産権を用いて新たに生み出された発明等であっても、すべて一方的に取引先に帰属する取引条件になっていた」。3番目が、「取引先に提供する内容に自社のノウハウや知的財産権が含まれているにもかかわらず、そのノウハウ・知的財産権にかかわる対価が無償だった」。
有識者からは、大企業による知財の搾取といった問題は、「理不尽な契約書にサインをさせられ、あとは一方的に技術を搾取されていくといったケース」で多いのではないかといった指摘も寄せらていたとされる。これを受け、公取委が「契約締結時にノウハウ・知的財産にかかわる取り扱いをチェックする担当者または相談できる外部の専門家(弁護士・弁理士等)の有無」を質問したところ、大企業では、92.1%が「担当者がいる」と回答。一方、中小企業で「担当者がいる」と答えたのは72.6%にとどまった。
さらに、「契約締結時にノウハウ・知的財産権の取り扱いについて不利な条項が入っていないかを不安に感じるか否か」を尋ねたところ、大企業では30.7%が「不安に感じる」と回答した。一方、大企業ほどチェック体制の構築が進んでいない中小企業では、「不安に感じる」と答えたのは21.3%にとどまったという。
公取委が、優越的地位の濫用規制にかかわる実態調査において、製造業者の保有するノウハウや知的財産に焦点を当てた調査を行うのは初めて。
今回の結果を受け、公取委は経済産業省や特許庁と連携し、製造業界全体に参考事例集を含めた調査結果を周知するほか、違反行為に対して厳正に対処していく考えを示した。
なお、同調査の結果については、共同通信が7日付で事前に報じていた。
<企業の規模別にみた担当者または相談できる外部の専門家の有無>
・大企業の調査結果
チェックする担当者がいる:56.9%
チェックする担当者はいないが、相談できる外部の専門家(弁護士、弁理士等)はいる:35.2%
チェックする担当者及び相談できる外部の専門家のいずれもいない:7.9%
・中小企業の結果
チェックする担当者がいる:18.2%
チェックする担当者はいないが、相談できる外部の専門家(弁護士、弁理士等)はいる:54.4%
チェックする担当者及び相談できる外部の専門家のいずれもいない:27.5%
(公正取引委員会「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的な地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」より)
共同通信は14日付で、ノーベル賞を受賞した京都大学の本庶佑教授が同社とのインタビューにおいて、がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許収入引き上げをめぐって対立している小野薬品工業に対して、提訴するか否かを7月にも最終判断する考えであることを明らかにしたと報じた。小野薬品は6月に株主総会を開催する予定で、本庶氏は株主総会の開催を待って7月にも判断する見通しだという。
複数のメディアが14日付で報じたところによると、世界貿易機関(WTO)が同日、中国による知財侵害に対して米国が提訴していた問題について、両国が12月末まで紛争処理を中断することで合意したことを明らかにしたという。米国が審理の中断を要請し、中国側が同意したという。WTOにおいて一審に当たる紛争処理委員会(パネル)が発表した。
複数の海外メディアが12日付(米国時間)で伝えたところによると、ファーウェイがベライゾン・コミュニケーションズに対して特許使用料を求めていることがわかったという。
同日付ウォール・ストリート・ジャーナルは、事情を知る関係者の話として、ファーウェイが通信ネットワークや通信機器、IoT関連の技術を含む200件以上の特許について、ベライゾンにライセンス料を支払うよう要求していると伝えた。
また、ロイター通信も同日付で、関係筋の話をもとに、ファーウェイがベライゾンに対し230件を超える特許をめぐり、10億ドル(約1080億円)以上のライセンス料を支払うよう求めたと報じた。
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