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特許 平成30年(行ケ)第10023号「研磨用クッション材」(知的財産高等裁判所 平成31年3月14日判決)

6月19日(水)配信

【事件概要】

 本件は、特許異議の申立て事件において、「特許第5905698号の請求項3及び4に係る特許を取り消す。」とした決定が取り消された事例である。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

 主な争点は、「甲5のカタログ」に記載のない「引張強さ」、「伸び」及び「ショアA硬度」を、本件公知発明の物性値として認定できるか否かである。

 

【結論】

 本件決定は、日本発条作成の「甲5、甲4のカタログ」の記載事項から、甲5のカタログに掲載されたニッパレイEXTは、甲4及び甲5のカタログに掲載されたニッパレイEXGの片面にPETフィルムを沿わせて構成したものであると認定した上で、ニッパレイEXTの物性値のうち、甲5のカタログに記載のない「引張強さ」、「伸び」及び「ショアA硬度」については、ニッパレイEXGと同じく、「引張強さが1.5MPa、伸びが150%、ショアA硬度が32」とみて差し支えないとして、本件公知発明を認定した。

 判決は、ニッパレイEXTが本件決定の認定した積層シート構造を有していることが本件出願前に公然知られ得る状態にあったことを認めることはできないし、仮に公然知られ得る状態にあったとしても、ニッパレイEXTの物性値のうち、「引張強さ」、「伸び」及び「ショアA硬度」が、甲5のカタログ記載のニッパレイEXGの値と同じ値であることが、本件出願前に公然知られ得る状態にあったものと認めることはできないから、本件決定認定の本件公知発明のうち、少なくとも「引張強さ」、「伸び」及び「ショアA硬度」の認定に誤りがあるというべきであると判示した。

 

【コメント】

 被告は、日本発条に対する甲5のカタログ記載のニッパレイEXTに関する問合せの回答結果に基づいて本件公知発明を認定したものであり、その認定に誤りはない旨主張したが、判決は、本件回答書の記載事項は被告が本件出願後に取得した情報であって、一般の第三者が本件出願前に知り得た情報であるとは直ちにはいえないし、また、その問合せ方法が、行政庁等の公的機関とは異なる一般の第三者でも採り得る通常の方法であることについての立証はないとして、被告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部寛)

 

書誌等:知財高裁判例集(別サイト)

 

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