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11月24日
7月3日(水)配信
【事件概要】
原告は、被告が配給上映した映画の予告編やパンフレット等に、原告の制作した本件タイプフェイスの一部の文字を無断で利用したことが、原告の著作権を侵害すると主張して損害賠償を請求したが裁判所(東京地方裁判所)はその請求を棄却した。
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【争点】
本件タイプフェイスの著作物性の有無
【裁判所の判断】
裁判所は、タイプフェイスが著作物に該当するには、従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならないとした。そして、被告により使用された文字に相当する本件タイプフェイスは、その制作時以前から存在するタイプフェイスのデザインから大きく外れるものとは認めがたく、また、本件タイプフェイスにおける「シ」、「ッ」、及び濁点の各文字については、2つの点をアルファベットの「U」の字に繋げた形状にしている点において従来のタイプフェイスにはない特徴を一応有しているということはできるが、顕著な特徴を有するといった独創性を備えているとまでは認めがたいとした。その結果、著作物性を否定した。
〈本件タイプフェイス(筆者にて一部抜粋)〉
【コメント】
本判決の判断基準である独創性と美的鑑賞性は、タイプフェイスに関する「ゴナ書体」最高裁判決(平成10年(受)第332号)に示されたものである。この基準はタイプフェイスの著作権保護にとって高いハードルであり、その保護を実質的に困難にしているといわれるが、本判決もそれを踏襲したものといえる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 佐藤英二)
書誌等(裁判所ウェブサイトまたは知的財産高等裁判所ウェブサイト)
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