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11月24日
9月11日(水)配信
【事件概要と争点】
原告は、次の商標権(原告商標権)を保有していた。
出願日:平成18年3月24日
登録日:平成18年10月13日
商標:
指定商品:時計(14類)
被告は、次の商標権(被告商標権)を使用していた。なお、被告自身は商標権者ではなく、商標権者から適法に買い受けた者として使用権を主張していた。
出願日:平成26年9月16日
登録日:平成28年12月22日
商標:
指定商品:腕時計の機能を有するスマートフォン等(9類)
被告は、平成28年6月頃から平成29年2月までの間、「moto」との標章(被告標章)が付されたスマートウォッチを販売していた。原告は、被告の行為について、原告商標権の侵害に基づき販売等差止と損害賠償を請求した。
指定商品中の腕時計について原告商標権の不使用取消審判が請求された(審判請求登録日:平成29年6月23日)。
本稿では、本件の争点のうち(1)商品類否、(2)登録商標行使の抗弁、及び(3)不使用取消を理由とする権利濫用の抗弁を取り上げる。
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【裁判所の判断】
(1)商品類比
裁判所は、最高裁昭和36年6月27日判決の判断基準(商品に同一又は類似の商標を使用するときに同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められるか否かにより判断)を示した上、被告製品のメーカーのウェブサイト及び被告製品のユーザーガイドの記載によるとスマートウォッチの主たる用途が時計であることに加えて、製造業者、売り場、需要者及び価格帯が重複することに着目して、スマートウォッチと不使用取消前の原告商標権の指定商品としての時計は類似すると判断した。
(2)登録商標使用の抗弁
被告は、被告標章と被告商標権に係る商標は実質的に同一であるから、商標権者が被告商標権(専用権)の範囲内で被告標章を使用したに過ぎないと主張した。
これに対し、裁判所は、被告商標権は原告商標権に基づき無効とされるべきであるから、登録商標使用の抗弁は成立しないと判断した。
(3)不使用取消を理由とする権利濫用の抗弁
裁判所は、原告商標権の指定商品中「腕時計」は取り消されるべきと判断した(置き時計については使用実績があった)。その結果、裁判所は、取消後の指定商品である「時計(腕時計を除く)」とスマートウォッチは類似しないと判断して、差止請求を却下した。他方、裁判所は、不使用取消の効力発生日(審判請求登録日)以前の侵害行為についての損害賠償を命じた。
【コメント】
本判決は、侵害訴訟における商品類否判断においては被告商品固有の取引実態が考慮されること、無効理由のある登録商標の専用権は認められないこと、及び登録商標が取り消されても取消効力発生日前の期間について損害賠償が認められることを確認した。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁護士 尾関孝彰)
書誌等(裁判所ウェブサイトまたは知的財産高等裁判所ウェブサイト)
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