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特許 平成31年(ネ)第10005号「骨切術用開大器」(知的財産高等裁判所 東京地方裁判所 令和元年7月24日判決)

11月20日(水)配信

 

【事件概要】

均等侵害を認めた一審判決に対し,文言侵害に該当するとして控訴を棄却した事例。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

被告製品が,本件特許の構成要件Eのうちの「揺動部材の一方に…係合部が設けられている」という要件を充足するか否か。

 

【結論】

構成要件Eは,「前記2対の揺動部材の一方に,他方の揺動部材と組み合わせられたときに,該他方の揺動部材に係合する係合部が設けられている骨切術用開大器。」というものである。…によれば,「揺動部材の一方に…係合部が設けられている」とは,「係合部」が,揺動部材に設けられており,かつ,それが2対のいずれの揺動部材に設けられているのか区別できることを要し,またそれをもって足りると解される。…「係合部」は,一方の揺動部材に「設けられている」ものである以上,「係合部」を含めた揺動部材を全体としてみれば,「係合部」はその一部分であるといえるが,別の部材で構成することが排斥される訳ではない。

 被告製品における角度調整器のピン及び留め金の突起部は,開操作の前に,組み合わせられた揺動部材1及び2の開口部に留め金の突起部がはめ込まれ,ピン用孔に角度調整器の2本のピンが挿通された状態に固定されるものである。このような固定態様に照らすと,「係合部」である角度調整器のピン及び留め金の突起部が,揺動部材1又は2に設けられているといえる。

 

【コメント】

本判決は,一審判決が「審査段階における補正で追加された構成要件について均等侵害を認めた事例」として注目を集めた事件の,控訴審判決である。従来,知財高裁が「特許出願過程において特許請求の範囲を限縮する補正等がされていたときは,特許権者は,もはや限縮された部分について均等を主張することは許されない。」旨判示してきた(知財高判平成27年(ネ)第10127号「Web-Pos方式」事件知財高判平成28年(ネ)第10007号「振動機能付き椅子」事件等)こととの関係で,本件の控訴審判決が待たれていたが,今回はその論点についての判断は示されなかった。

 

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳満昭)

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