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4月27日
1月8日(水)配信
【事案の概要と争点】
(略称のP1~P6は判決文で用いられているものである。)
被告Yは、訴外Bが管理していた旧ウェブサイトの移管を原告に委託し、原告は、これを本件サーバへ移管した。また被告Yは、本件保守契約書により、原告に対し、ウェブサイトの保守業務を委託した。本件保守契約には、契約に基づく制作物の権利は原告に帰属する旨の記載がある。
被告Yは、本件注文書により、原告に対し、新たなウェブサイトの制作を委託した(本件制作業務委託契約)。本件注文書には、リニューアルによる成果物に関する権利は原告に帰属する旨の記載がある。
原告は、原告ウェブサイトを制作し、同ウェブサイトを本件サーバ上に公開した。しかし、被告から原告に対するサーバの利用料金等の支払いが滞り、サーバは凍結されるに至った。
被告P3は、新たにP6に対し、サーバの復旧作業を委託し、P6はこれに応じて、原告ウェブサイトのデータを用いて被告ウェブサイトを制作、公開した。被告ウェブサイトの内容は、一見して原告ウェブサイトと同じである。
本件は、原告が、原告ウェブサイトを、被告らが無断で複製し、新たなウェブサイト等を制作してインターネット上に公開したことが、原告の著作権等を侵害すると主張し、被告ウェブサイトの複製等の差止め、及び、損害賠償を求めた事案である。
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【裁判所の判断】
(1)原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属
裁判所は、原告ウェブサイトが被告の発意により制作されたものであること、被告の企業活動のために使用される予定だったこと、原告が被告従業員を通じて仕様や構成について指示及び要望を聞いて制作したものであること、原告が被告Yに使用を許諾し使用料を収受するといった形式ではなく、原告ウェブサイトの制作に対し対価を支払う旨を約したことから、原告ウェブサイトの著作権は全体としてYに帰属したと解するのが相当と判断した。
(2)合意による著作権の帰属
本件保守契約書については、同契約により委託されているのは保守業務であって、ウェブサイトの制作は予定されていないから、同契約に基づく原告への著作権の帰属は否定した。
また本件制作業務委託契約についても、本件注文書の上記記載にもかかわらず、原告ウェブサイトの権利が原告に帰属するとのは不合理であり、あえてそのように合意するとすれば、明確な合意が必要なところ、かかる証拠はないとした。
【コメント】
事例判断ではあるが、現代社会において重要な取引であるウェブサイトの制作委託取引についてのものであり、契約内容の重要性を示唆するものとして実務の参考になる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁護士 寺下雄介)
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