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1月19日
1月29日(水)配信
原告は、大阪市内でバレエスクールを経営している個人事業主であり、次の商標(本件商標)について商標権(本件商標権)を保有していた。
登録番号:第5973674号
出願日:平成29年1月19日
登録日:平成29年8月18日
商標:CoCoバレエ(標準文字)
指定役務:バレエスクールにおけるバレエの教授(41類)
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被告は、東京都町田市内でバレエスクールを経営している個人事業主であり、「ココバレエスクール」等の標章(被告標章)を用いていた。
被告は、被告標章の使用が被告のバレエスクールによる生徒募集に寄与したか不明であることから、損害は発生していないか、損害が発生しているとしてもその額は僅少であると主張した。
(1)侵害の有無
裁判所は、本件商標の「CoCo」から「ココ」との称呼が生じかつ「スクール」は要部でない(教室という一般的意味を有するに過ぎない)ため称呼が類似すること、及び原告のバレエスクールと被告のバレエスクールは地理的に離れているものの需要者がインターネット検索したときに被告のバレエスクールが原告のバレエスクールとの間に何らかのつながりや提携関係があると誤認する可能性があること(出所混同のおそれがあること)を理由に、「ココバレエスクール」が本件商標に類似することを認定した。
被告の事業が本件商標権の指定役務に該当することには争いがなかった。
そのため、裁判所は、被告がウェブサイト、看板等にバレエスクールの名称として被告標章を使用した行為は本件商標権を侵害すると認定した。
(2)損害
裁判所は、上記のとおり出所混同のおそれがあったこと、及び原告のバレエスクールの方が規模が大きく、被告は原告のバレエスクールの顧客誘引力を利用し得る状態にあったことを理由に、使用料相当額の損害が発生したと認定した。
他方、裁判所は、原告のバレエスクールと被告のバレエスクールが地理的に離れていることから、原告のバレエスクールの生徒が被告標章を見たことによって被告のバレエスクールに移籍したり、原告のバレエスクールに入会しようとしていた者が被告標章を見たことによって被告のバレエスクールに入会したという損害が発生したことは立証されていないと判断した。また、裁判所は、被告は本件商標の登録前から被告標章を使用しており、原告の警告により初めて本件商標の存在を知ったと認められるから、本件商標の顧客吸引力や信用を利用することを目的として被告標章を使用したものでないと判断した。裁判所は、これらの事情を考慮して、損害は抽象的な誤認混同のおそれを排除できなかったことに過ぎず、その額は1か月当たり1万円と評価した上、原告補佐人である弁理士の報酬と侵害行為との相当因果関係を否定した。
結論として、裁判所は、損害額は16万円(1万円×16か月(侵害期間))と認定した。
本判決は、侵害行為により実質的損失が発生していないことを考慮して低額の損害額を認定した。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁護士 尾関 孝彰)
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