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11月24日
2月12日(水)配信
【事件概要】
本件は、無効審判事件において、訂正請求を認めず、特許を無効とする審決が支持された事例である。
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【争点】
争点は、訂正要件の判断の誤り、明確性要件違反の判断の誤りの有無である。
【結論】
訂正事項は、ゼロクロス時間の上限値を2.50秒と特定するのみで下限値を特定していないところ、これは、ゼロクロス時間を0秒以上2.50秒の範囲と特定して特許請求の範囲に限定を付加する訂正であるということができる。本件訂正前の本件明細書には、ゼロクロス時間が0秒以上2.30秒未満であるタブ端子についての明示的な記載はない。そして、本件明細書の記載からは、どのようなゼロクロス時間をとるのかを予測することは困難であるから、ゼロクロス時間を2.30秒未満とした上でウィスカの発生を抑制することが自明であるということはできない。よって、訂正事項に係る訂正は、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものとはいえない。
本件発明7の「・・・請求項6に記載のタブ端子。」は、請求項6の「前記の酸化スズ形成処理が、溶剤処理により行われる、請求項1または2に記載のタブ端子。」を引用するものであるから、特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合に当たる。そうすると、本件発明7について明確性要件に適合するというためには、出願時において本件発明7の「タブ端子」を、その構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在することを要するところ、原告はかかる事情について、具体的な主張立証をしない。したがって、本件発明7の記載は、明確性要件に適合しない。
【コメント】
原告は、訂正事項は、ゼロクロス時間が2.50秒を超える態様を除くものに過ぎず、本件訂正の前後を通じ、侵害の成否の結論は異ならないと主張したが、特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合であっても、付加される訂正事項が明細書等に明示的に記載されている場合や、その記載から自明である事項である場合でなければ、当該訂正が新たな技術的事項を導入するものとなるとして、原告の主張を採用しなかった。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)
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