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特許 平成31年(行ケ)第10025号「気体溶解装置及び気体溶解方法」(知的財産高等裁判所 令和2年2月19日)

5月13日(水)配信

 

【事件概要】

 本件は、無効審判事件において、「本件特許を無効とする。」との審決が取消された事例である。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

 争点は、本件特許発明のサポート要件の適合性の判断の誤りの有無である。

 

【結論】

 審決は、0.8mより長い細管には、過飽和の状態が安定に維持できない範囲が含まれているから、本件特許発明は、サポート要件に適合しないと判断した。

 判決は、当業者は、本件明細書の記載及び技術常識から、本件特許発明の気体溶解装置は、降圧移送手段により取出口からの水素水の吐出動作による管状路内の圧力変動を防止し、管状路内に層流を形成させることに特徴がある装置であり、必ずしも厳密な数値的な制御を行うことに特徴があるものではないと理解し、細管の長さが0.8mから1.4mの数値範囲のときであっても、「細管の内径X及び水素水の流量の各値が同じである場合に水素濃度の値を高めるには、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値を大きくすればよく、この場合に加圧型気体溶解手段の圧力Y及び細管の長さLの値をいずれも大きくして、水素濃度の値を高めるには、加圧型気体溶解手段の圧力Yの値の増加割合が細管の長さLの値の増加割合よりも大きくなるように各値を選択すればよいこと」を勘案し、細管からなる管状路内の水素水に層流を形成させるようX、Y及びLの値を選択することにより、「気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ、かかる過飽和の状態を安定に維持」するという本件特許発明の課題を解決できると認識できるものと認められるから、本件特許発明は、サポート要件に適合すると判示した。

 

【コメント】

 被告は、過飽和の状態が維持される条件として、圧力、水素発生量、水の流量等の条件は、過飽和の状態を安定に維持するという本件特許発明の課題の解決に不可欠であるにもかかわらず、特許請求の範囲にはそれらの条件が記載されていないため、本件特許発明は、サポート要件に適合しない旨主張したが、判決は、本件明細書の記載及び技術常識に基づいて、当業者が、本件特許発明の課題を解決できると認識できるものと認められるとして、被告の上記主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)

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