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特許 平成31年(行ケ)第10043号「高コントラストタイヤパターン及びその製作方法」(知的財産高等裁判所 令和2年2月20日)

7月1日(水)配信

 

【事件概要】

本件は、無効審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が取消された事例である。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

 主な争点は、本件発明の「ブレード22の壁は、その面積の少なくとも1/4にわたり、5μm~30μmの平均粗さRzを有し、・・・」(相違点2)が容易か否かである。

 

【結論】

 本件審決は、甲1発明に、コントラストを得ることを目的として甲第2号証に記載された事項(タイヤの外表面の少なくとも一部に、十点平均粗さRzが5〜100μmであり、・・・粗面部を含む)を適用する動機付けはないから、相違点2は容易とはいえないと判断した。

判決は、甲2文献の記載を具体的に見ると、タイヤのゴムに添加されたワックス等の油分などの添加剤がタイヤの外表面に移行して滲み出し、外観を損ねるという現象を課題として認識し、これを解決するための技術的事項が記載されたものであり、このような現象は、甲1発明の表示マーク部分にも生じうるものであり、よって、甲2文献の記載事項は、表示マーク部分を含む、甲1発明のタイヤの外観をさらに向上させるのに適した内容と考えられるから、当業者であれば、甲1発明に甲2文献の記載事項を組み合わせることを試みる十分な動機付けがあり、両者を組み合わせ、上記相違点2に係る構成に容易に想到すると認められると判示した。

 

(本件発明)

【コメント】

 被告らは、甲1発明のパターンを含むサイドウォール面のすべてを粗面部とすると、コントラスト効果が当然に高まることはなく、本件発明の目的を達成できないと主張したが、判決は、本件発明には、ブレード22を含む可視面全体を5μm〜30μmの平均粗さRzを有するようにした構成も含まれるのであって、構成が同一であれば効果も同一であると考えられるから、甲1発明に甲2文献の粗面部を適用した構成が、本件発明の目的を達成できていないとはいえないとして被告らの主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)

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