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11月24日
8月5日(水)配信
無効審判において進歩性ありと判断した審決を知財高裁が取り消した事例。
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訂正請求によって「血液浄化用薬液」の必須成分を追加し、かつそれらの濃度範囲を特定したところ、①訂正が新規事項ではないか、②マグネシウムイオン濃度の相違点は容易想到ではないか等が争点となった。
①本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
②甲3に接した当業者は、引用発明における上記即時使用溶液の各成分のイオン濃度を最適なものに変更し得るものと理解するものといえる。・・・引用発明における上記即時使用溶液のマグネシウムイオン濃度を市販されている透析液及び補充液の数値範囲の中で調整することは、当業者が適宜選択し得る設計事項であるものと認められる。
特許権者は、「進歩性」に関して、「溶液に含まれる他の成分及び各イオン濃度の組合せが調整される必要があるから、これらの組合せが1個の不可分のまとまりのある技術事項となる」として、マグネシウムイオン等の濃度調整が単純ではないことを主張した。
一方で、「新規事項」の指摘に対する反論においては、これらの組合せの個々の成分の濃度が、明細書のあちこちの記載(市販品の説明を含む)からの寄せ集めであったこともあり、「新たな技術的事項を導入するもの」とまでは判断されなかったものの、「進歩性」の判断において「これらの組合せが1個の不可分のまとまりのある技術事項」であるから濃度調整が単純ではない、との心証を裁判所に与えることはできなかったようである。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 田村 明照)
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