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12月1日
8月19日(水)配信
【事件概要】 進歩性を否定した拒絶査定不服審判の審決が取り消された事例。
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【主な争点】 相違点についての容易想到性の判断誤りの有無。
【結論】
引用発明におけるカードの補充は、本願発明におけるそれとの対比において、補充の契機となるカードの移動先の点において異なるほか、移動されるカードの種類や機能においても異なっており、相違点6(注:追加のキャラクタカードが、第1フィールドに補充されるように表示する契機に関する相違点。)は小さな相違ではない。そして、かかる相違点6の存在によって、引用発明と本願発明とではゲームの性格が相当程度に異なってくるといえる。したがって、相違点6に係る構成が「ゲーム上の取決めにすぎない」として、他の公知技術等を用いた論理付けを示さないまま容易想到と判断することは、相当でない。
被告は、手持ちのカードの数が減じたときにこれを補充する構成とするかこれを補充しない構成とするかは、ゲーム制作者がゲームのルールを決める際に適宜決めるべき設計的な事項にすぎないから、引用発明において、第3領域(アタックゾーン)にカードを配置した場合でも第11領域の手持ちカードが補充されるようにすることは、何ら技術的な困難性があることではなく、まさに、提供しようとするゲーム性に応じたゲーム上の取決めにすぎない旨主張する。しかしながら、相違点6は、ゲームの性格に関わる重要な相違点であって、単にルール上の取決めにすぎないとの理由で容易想到性を肯定することはできない。
【コメント】
本判決は、ゲーム上の取決めの相違も進歩性の根拠となり得ることを認めた判決のように見える。審査基準にも、ゲーム上の取決めなどの人為的取決めの非容易想到性を進歩性を肯定する根拠としない旨の記載は見当たらないが、人為的取決めの非容易想到性をもって発明の進歩性を肯定することについては議論のあるところのように思われる。本判決は、その議論に一石を投じるものかもしれない。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)
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