〜
1月19日
9月2日(水)配信
【事件概要】
本件は、無効審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が維持された事例である。
▶判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る
【争点】
争点は、ゴム蓋17が、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開くことが容易か否かである。
【結論】
相違点6に係る本件発明の構成は、ゴム蓋が、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開くというものであるところ、引用例には、上記本件発明の構成に関する記載や示唆は全くない。
原告は、上記相違点6に係る課題及び解決手段は、密閉型のグラブバケットの分野において、周知であり(甲19)、これら周知技術を参酌することにより上記相違点6に係る構成は、引用例の記載から導き出すことのできるものであるから、引用例に記載されているに等しいと主張したが、判決は、甲19から原告の主張するような技術的課題及び解決手段を認定することはできず、この原告の主張は、理由がなく、しかも、引用発明に上記周知技術を適用すれば上記相違点6に係る構成に容易に想到できたともいえないと判示した。
(本件発明)
【コメント】
本件特許については、約7年4月間にわたり、4回の審決と3回の判決、1回の決定がされているところ、被告は、本件無効審判における事実及び証拠は、別件無効審判のそれと実質的に同一であるから、本件無効審判の請求は、特許法167条の規定に違反し、許されない旨主張したが、判決は、特許法167条は、「特許無効審判‥の審決が確定したときは、当事者‥は、同一の事実‥に基づいてその審判を請求することができない。」と規定しており、そして、進歩性の欠如という無効理由について、主引用発明が異なるときは、同一の事実に当たらないことになるところ、これを本件についてみると、別件無効審判において、主引用発明とされたのは、甲8等に記載された発明であり、本件の主引用例は、別件無効審判では提出されていないから、被告の主張は、理由がないと判示した。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)
こんな記事も読まれています