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1月26日
11月18日(水)配信
【事件概要】
この事件は、原告が特許無効審判の請求を不成立とした審決の取消しを求めた事案である。知的財産高等裁判所は原告の請求を棄却した。
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【主な争点】
本件発明が先願発明(甲1発明)と同一であるか否か。
【結論】
(ⅰ)甲1には、「一室に硫黄原子を含む化合物を含有する溶液が収容され、微量金属元素収容容器は他の室に収納することにより、微量金属元素を含む溶液が安定する」という本件発明の基礎となる技術思想について何ら記載や示唆がなく、(ⅱ)甲1では、アミノ酸輸液にシステイン、または…もしくはN-アシル体を含むかどうかは任意であり、(ⅲ)さらに、甲1においては、微量金属元素の収容場所について複数の選択肢があって、特定されていないのであるから、当業者は、甲1から、収容室23にシステイン、または…もしくはN-アシル体を収容し、区画室28に微量金属元素を収容するという、ひとまとまりの技術思想としての構成を認識すると認めることはできない。…。
本件発明1と甲1輸液製剤発明とを対比すると、以下の一致点及び相違点が認められる。
…。
(相違点1-1)
本件発明1においては、微量金属元素が、含硫アミノ酸及び亜硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する溶液が充填されている室とは他の室に収納された微量金属元素収容容器に収容されており、…点。
(相違点1-2)
複数の室の存在させる成分に関して、本件発明1は、その一室に含まれる溶液がアセチルシステインを含むアミノ酸輸液であり、他の室に鉄、マンガン及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の微量金属元素を含む液が収容された微量金属元素収容容器が収納されているのに対して、…点。
…。
…、本件発明1の「アセチルシステイン」は、システインのN-アシル体であるから、相違点1-1及び相違点1-2は、実質的な相違点ということができる。
以上からすると、その余の点について判断するまでもなく、本件発明1が甲1輸液製剤発明と同一ではないとした審決は結論において相当であり、原告が主張する取消事由1は理由がない。
【コメント】
原告は、本件発明の構成要件を「解決すべき課題に係る発明特定事項」等に分けて、「課題を解決するための手段に係る発明特定事項」以外について実質的な相違点でない旨主張したが、裁判所は、「課題を解決するための手段に係る発明特定事項」ではないからといって、そのことから直ちに「当該相違点が実質的な相違点ではないとはいえない」として原告の主張を採用しなかった。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住 和之)
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