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12月15日
2月17日(水)配信
【事件概要】 新規事項を追加するものであるとして訂正請求を認めず、特許を取り消した異議決定が、取り消された事例。
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【主な争点】 新規事項の追加についての判断の誤りの有無。
【結論】 本件明細書等の記載を検討してみると、たしかに、確認者が目視で安全確認を行う場合に関する実施例1、2、4においては、安全確認終了入力手段は乗降室内に設けるものとされ、確認者がカメラとモニタによって安全確認を行う実施例3においてのみ、安全確認終了入力手段を乗降室の内、外に複数設けてもよいと記載されているのであって、乗降室外目視構成(注:訂正後請求項1に含まれる構成であって、異議決定が、新規事項に該当するとした構成)を前提とした実施例の記載はない。しかしながら、これらはあくまでも実施例の記載であるから、一般的にいえば、発明の構成を実施例記載の構成に限定するものとはいえないし、本件明細書等全体を見ても、発明の構成を、実施例1~4記載の構成に限定する旨を定めたと解し得るような記載は存在しない。
他方、発明の目的・意義という観点から検討すると、安全確認実施位置や安全確認終了入力手段は、乗降室内の安全等を確認できる位置にあれば、安全確認をより確実に行うという発明の目的・意義は達成されるはずであり、その位置を乗降室の内又は外に限定すべき理由はない(被告は、このような解釈は、本件明細書等…を不当に拡大解釈するものであるという趣旨の主張をするが、この解釈は、本件明細書等全体を考慮することによって導き得るものである。)。
【コメント】 本件の訂正請求は、本件明細書等に明示的に記載されている下位概念の構成のみならず明示的には記載されていない下位概念の構成(乗降室外目視構成)をも含む、いわば中間概念の構成を請求項1に追加しようとしたものといえる。本件のように、構成から効果が予測できる分野の発明においては、「本件明細書等全体を考慮することによって導き得る事項」の範囲が、明細書に明示的に記載されていない中間概念にまで広がり得ることを示す例といえる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)
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