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12月15日
3月3日(水)配信
【事件概要】
本件は、拒絶査定不服審判において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が維持された事例である。
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【争点】
主な争点は、先願発明は、未完成といえるか否か、これと同一の後願を排除する効果を有するか否かである。
【結論】
ガラス合紙の、シリコーンのポリジメチルシロキサンである有機ケイ素化合物の含有量を3ppm以下、好ましくは1ppm以下で、0.05ppm以上とした先願発明は、ガラス合紙からガラス板に転写された有機ケイ素化合物に起因する配線の不良等を大幅に低減できるものであって、先願発明の目的とする効果を奏するものであること、そのようなガラス合紙は、ポリジメチルシロキサンを含有する消泡剤を使用しないで製造したパルプを原料として用い、ガラス合紙の製造工程において、パルプの洗浄、紙のシャワー洗浄、水槽を用いる洗浄や、これらを2種以上行う方法により製造できること、以上のことが理解できる。そうすると、先願発明は、技術内容がその技術分野における通常の知識を持つ者であれば何人でもこれを反覆実施してその目的とする技術効果をあげることができる程度に構成されたものというべきであるので、先願発明は、特許法29条の2にいう「発明」に該当し、未完成とはいえないから、同条により、これと同一の後願を排除する効果を有する。
【コメント】
特許法29条の2にいう「発明」について、判決は、特許法29条の2にいう「発明」とは、先願明細書等に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から把握される発明をいい、先願明細書等に記載がなくても、当業者の有する技術常識を参酌して先願の発明を認定することができる一方、当業者の有する技術常識を参酌してもなお技術内容の開示が不十分であるような発明は、ここでいう「発明」には該当せず、同条の定める後願を排除する効果を有しないし、また、技術内容が当業者であれば何人でもこれを反覆実施してその目的とする技術効果をあげることができる程度に構成されていないものは、「発明」としては未完成であり、特許法29条の2にいう「発明」に該当しないものというべきであると判示している。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)
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