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12月15日
3月17日(水)配信
【事件概要】
この事件は、原告が特許権の存続期間の延長登録を無効とする審決の取消しを求めた事案である。知的財産高等裁判所は被告Nの被告適格に関する本案前の抗弁は理由がないとの中間判決をした。
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【主な争点】
被告Nが被告適格を有するか否か。
【結論】
特許法148条1項は、「第132条第1項の規定により審判を請求することができる者は、審理の終結に至るまでは、請求人としてその審判に参加することができる。」として、1項参加人が、特許無効審判又は延長登録無効審判(以下、併せて単に「無効審判」という。)に「請求人」として参加することを明記している。したがって、1項参加人は、特許法179条1項の「請求人」として、被告適格を有するものと解される。
また、1項参加をすることができるのは無効審判を請求できる者に限られ、かつ、1項参加人は、特許法148条4項のような規定がなくても、当然に一切の審判手続をすることができるとされている上、被参加人が請求を取り下げても審判手続を続行できるとされている(同条2項)。これらのことは、1項参加人が、正に「請求人」としての地位を有することを示しており、そのことからしても、1項参加人は被告適格を有するものと解することができる。
したがって、本件において、被告Nは、被告適格を有するものと認められ、被告適格が欠けることを理由とする被告Nの本案前の抗弁は理由がない。
【コメント】
被告Nは、「審判便覧によると、1項参加人も原則として任意に取下げができるとされている」、「参加の申請において「請求」が定立されていない」、「1項参加人が特許法148条1項に基づいて「請求人」となるのは、被参加人が請求を取り下げ、1項参加人が審判手続を続行した場合に限られる」などと主張したが、裁判所は、審判便覧の取扱いについては「被参加人が取下げをしない限り、特許法155条2項が保護しようとしている被請求人の利益、すなわち、審決を得て、審判請求の理由がないことを確定するという利益の保護は図られているのであるから、その段階で1項参加人の取下げについて被請求人の同意を要する実益は乏しいことから、上記のように取り扱われていると解され」るとし、また、「特許法施行規則様式65についても、1項参加人の請求は、被参加人の請求と同一のものであるとの理解の下に上記のような様式が定められていると解され」、さらに、1項参加人が特許法148条1項に基づいて「「請求人」となるのは、被参加人が審判請求を取り下げ、1項参加人が審判手続を続行した場合に限られると解することはできない」などとして、被告Nの主張を採用しなかった。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住 和之)
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