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12月15日
4月21日(水)配信
【事件概要】
「請求項6、7、9ないし13に係る発明についての審判の請求は、成り立たない」旨の特許無効審判の審決が維持された事例。
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【争点】
容易想到性の判断の誤り、サポート要件違反の判断の誤り、明確性要件違反の判断の誤り、が争点となったが、ここでは、請求項6が引用する請求項1に記載された「開孔率が3.07%以上」という記載についての、明確性要件違反の原告主張に対する知財高裁の判断を紹介する。
【結論】
原告は、貫通孔の開孔率は、発明の課題解決に直結する特徴部分であり、開孔率の特定が不充分であることは特許権の独占権の範囲についての予測可能性を奪うものであるから、本件発明1において「開孔率が3.07%以上」とのみ記載され、上限が規定されていなくても明確性要件を満たすとした判断には誤りがある旨主張する。
しかし、「開孔率3.07%以上」という記載そのものは明確である上、開孔率の上限値が規定されていないとしても、当業者からすれば、実質的に孔として存在し得ないような開孔率を有するものを含まないことは明らかであるから、開孔率の上限が規定されていないことを理由として、特許権の独占権の範囲についての予測可能性を奪うものであるということはできない。
また、特許請求の範囲に記載された数値範囲が不明確であるか否かの判断に際して、当該数値範囲が臨界的意義を有するか否かは関係しないから、この点からも原告の主張は理由がない。
したがって、「開孔率3.07%以上」との記載は、明確性要件に反するとはいえず、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
【コメント】
明確性要件に関する審査基準には、明確性要件違反の類型の一つとして、「上限又は下限だけを示すような数値範囲限定(「~以上」、「~以下」等)がある結果、発明の範囲が不明確となる場合」が挙げられているが、どのような場合がそこでいう「発明の範囲が不明確となる場合」に該当するのかは必ずしも明らかではない。本件は、そこでいう「発明の範囲が不明確となる場合」には該当しないケースの一例を示すものとして参考になると思われる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)
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