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特許 令和2年(行ケ)第10030号「排水栓装置」
(知的財産高等裁判所 令和3年4月28日)

7月7日(水)配信

 

 

  • 主な争点
     相違点1に関して、甲1発明の「縁部2」の構成を甲3,5及び8に例示される周知技術のように構成することが容易か否か。

 

  • 結論
     甲1には、縁部2が排水カップ6と排水ケーシング3とで挟持取付けられていることやその作用等について明示的に述べた記載はない。また、甲1の記載事項全体(図面を含む。)をみても、縁部2が排水カップ6と排水ケーシング3とで挟持取付けられている構成について、取付けの強固さや水密性等の観点から、改良すべき課題があることを示唆する記載もない。
     本件周知技術に係る甲3,5及び8には、円筒状陥没部の底部に形成した内向きフランジ部を排水口金具と接続管とで挟持取付ける構成の作用等について述べた記載はない。また、甲3,5及び8には、取付けの強固さや水密性等の観点から、内向きフランジ部を排水口金具と接続管とで挟持取付ける構成が、甲1の図面記載の縁部2が排水カップ6と排水ケーシング3とで挟持取付けられる構成よりも優れていることを示唆する記載はない。
     甲1に接した当業者は、甲1発明の縁部2の構成について、取付けの強固さや水密性の点において課題があることを認識するとはいえないから、甲1発明の縁部2に本件周知技術の構成を適用する動機付けがあるものと認めることはできない。
     したがって、当業者は、甲1及び本件周知技術に基づいて、甲1発明において、相違点1に係る本件発明の構成とすることを容易に想到することができたものと認めることはできない。

 

  • コメント
     甲1発明の縁部2周辺の排水回りの構造部分において、取付けの強固さや水密性等を考慮することは当然の課題(周知の課題)であるということもできそうであるが、判決は、甲1並びに周知技術に係る甲3,5,及び8の記載事項を精査した上で、そのような課題は認識できないとし、動機付けの存在を否定した。
     本判決は、相違点に係る構成が周知技術であり、一見して容易と思えるような場合であっても、適用の検討は慎重に行う必要があることを示したものといえよう。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 和田 雄二)

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