〜
12月1日
7月21日(水)配信
【事件概要】
特許異議の申立てを受けて、進歩性欠如を理由として特許庁がした取消決定を、知的財産高等裁判所が取り消した事例。
▶判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る
【争点】
一致点の認定の誤り及び相違点の看過が存在するか。具体的には、甲1発明は、本件発明1の「ロール方向の傾きとピッチ方向の傾きを検出する傾き検出部と、」(構成要件1C)、「前記画像表示部に前記傾き検出部により検出されたロール方向の傾き情報を表示」(構成要件D-1)する「表示制御手段」(構成要件1D)の構成を備えるか。
【結論】
本件発明1における「ロール方向の傾き」を「検出する傾き検出部」は、光軸まわりに回転させる方向の傾き度合いを検出し、「ピッチ方向の傾き」を「検出する傾き検出部」は、撮像装置の水平軸周りの傾き度合いを検出する。
一方、甲1発明で測定される第1傾斜度(第1軸(方向D401)と水平面とが成す角度)及び第2傾斜度(第2軸(方向D402)と水平面とが成す角度)は、光軸が水平面と平行である場合を除き、撮像装置を光軸まわりに回転させる方向の傾きの角度とは異なるものであり、それらに基づいて判定される「天地方向」は、本件発明1の「ロール方向の傾き」とは異なる。また、第1傾斜度及び第2傾斜度は、撮像装置の水平軸が水平面と平行である場合を除き、撮像装置を水平軸周りの傾き度合いを算出するものではない。
以上によれば、甲1発明は、構成要件1C、構成要件D-1及び構成要件1Dを備えず、これらの点は本件発明1との一致点ではなく相違点である。
【コメント】
特許庁は、甲1発明で測定される第1傾斜度及び第2傾斜度が本件発明1における「ロール方向の傾き」及び「ピッチ方向の傾き」と一致する場合があることに引きずられて、本来は相違点である構成を、誤って一致点と認定してしまったように思われる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小林 紀史)
こんな記事も読まれています