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12月1日
10月6日(水)配信
【事件概要】
進歩性欠如を理由として一部の請求項に係る特許を無効とした審決を、知的財産高等裁判所が取り消した事例。
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【争点】
甲1(米国特許第9245162号明細書)の記載から、本件発明と対比するべき「読取り/書込みモジュール200」に係る発明(甲1発明2)を認定することができるか。
【結論】
「読取り/書込みモジュール200」(図2)が組み込まれる「読取り/書込みデバイス102」(図1)には、アパーチャ106が設けられた載置キャビティが備えられ、挿入アパーチャ106は、「防壁」によって取り囲まれ、「防壁」は、電波に対する保護を行うスクリーンを形成し、プラスチック製の内側パネルと、電波を吸収する吸収性発泡体と、電波を反射する金属製の外側パネルから構成されている。
本件出願日当時の技術常識に照らすと、当業者は、「読取り/書込みデバイス102」の「防壁」が外部への電波の漏えい又は干渉を防止するものであると理解すると認められる。
「読取り/書込みモジュール200」だけで電波の漏えい又は干渉を防止することは想定されていないものと認められるところ、外部への電波の漏えい又は干渉を防止する機能は、本件発明と対比されるべき「読取装置」には欠かせないものであるから、「読取り/書込みモジュール200」が単体で、本件発明と対比されるべき「読取装置」であると認めることはできない。
以上によると、本件審決のように甲1発明2を認定して、これを本件発明と対比することはできない。
【コメント】
一般に、引用発明は、特許性の判断が求められている発明と対比するのに必要な範囲で過不足なく認定するべきであるとされるが、認定が「必要な範囲で過不足なく」されているか否かは、判断が難しい問題である。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小林 紀史)
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