ホーム > 知財特集記事・知財寄稿記事 > 創英国際特許法律事務所「知財判決ダイジェスト」

この記事をはてなブックマークに追加

特許 令和2年(行ケ)第10115号「美容器」(知的財産高等裁判所 令和3年6月24日)

10月20日(水)配信

 

【事件概要】
 進歩性欠如を理由として請求項1に係る発明についての特許を無効とした審決を、知財高裁が取り消した事例。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 長尺状のハンドルが甲1に記載されたに等しい事項といえるか。また、このことを前提とした相違点1及び相違点3についての審決の判断は妥当であるか。

 

【結論】
 甲1には,請求項1に「任意の形状の中央ハンドル」との記載があり,発明の詳細な説明中に,ユーザが握る中央ハンドルは「球,あるいは他のあらゆる任意の形状とすることが可能である。」と記載があることから,長尺状のハンドルを排除するものではないと理解することはできる。しかし,甲1の添付図(FIG.1,FIG.2)は,…球状のハンドルが開示されているとしか理解できないものである。
 …長尺状のハンドルが甲1に記載されたに等しい事項であると認めることはできないから,…長尺状のハンドルが甲1に記載されたに等しい事項であることを前提として,相違点1については,ハンドルを長尺状のものとした場合には,一対の回転可能な球を先端部に配置することは甲1発明,又は甲1発明及び周知技術1に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものであり,また,相違点3については実質的な相違点にならないとした本件審決の判断は誤りというほかない。

 

【コメント】
 長尺状のハンドルが甲1に記載されたに等しい事項でない場合は、ハンドルを長尺状にするのは容易とした上で、更に球(ボール)をハンドルの先端部に配置すること(相違点1)、及びボールの軸線をハンドルの中心軸に対して前傾させて構成すること(相違点3)は容易であるということになるため(いわゆる容易の容易)、審決は上記の前提で論理を構築せざるを得なかったようにも思われる。なお、本件特許に係る請求項1にはハンドルの具体的形状は特定されていないにもかかわらず、長尺状であることが論点になってしまった感がある。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 和田 雄二)

こんな記事も読まれています

特許 令和5年(ネ)第10040号
「皮下組織および皮下脂肪組織増加促進用組...

知財判決ダイジェスト (創英国際特許法律事務所)

特許 令和5年(行ケ)第10139号「遊技機」
(知的財産高等裁判所 令和6...

知財判決ダイジェスト (創英国際特許法律事務所)

特許 令和5年(行ケ)第10093号、第10094号
「運動障害治療剤」(知的財...

知財判決ダイジェスト (創英国際特許法律事務所)

特許 令和6年(行コ)第10006号
「フードコンテナ並びに注意を喚起し誘引...

知財判決ダイジェスト (創英国際特許法律事務所)

知財ニュースまとめ
6月2日

6月8日

先週の知財ニューストピックス(6月2日〜6月8日)

知財ニューストピックス

知財ニュースまとめ
5月26日

6月1日

先週の知財ニューストピックス(5月26日〜6月1日)

知財ニューストピックス

知財ニュースまとめ
5月19日

5月25日

先週の知財ニューストピックス(5月19日〜5月25日)

知財ニューストピックス