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特許 令和3年(行ケ)第10097号「ゴルフスイングモニタリングシステム」(知的財産高等裁判所 令和4年4月28日)

6月15日(水)配信

 

【事件概要】
 拒絶査定不服審判の請求時の特許請求の範囲についての補正を特許法17条の2第5項に違反する(補正の目的要件を満たさない)として却下し、拒絶査定を支持した審決が、維持された事例。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 補正により新しい請求項を追加する増項補正が、特許法17条の2第5項2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するか否か。

 

【結論】
 補正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するというためには、補正後の請求項が補正前の請求項の発明特定事項を限定した関係にあることが必要であり、その判断に当たっては、補正後の請求項が補正前のどの請求項と対応関係にあるかを特定し、その上で、補正後の請求項が補正前の当該請求項の発明特定事項を限定するものかどうかを判断すべきものと解される。また、補正により新しい請求項を追加する増項補正であっても、補正後の新しい請求項がそれと対応関係にある補正前の特定の請求項の発明特定事項を限定するものであれば、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものと解される。
 補正事項1は、新たに本件補正後の請求項8を追加する増項補正に当たり、また、本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項10と対応関係にあることが認められる。原告は、本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1ないし7に従属し、本件補正前の請求項1に内的付加に相当する追加的要件を規定したものであり、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、本件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項ではないとしても、これに準ずるような対応関係に立つ旨主張する。しかしながら、本件補正後の請求項8は、本件補正後の請求項1のほか、請求項2ないし7の発明特定事項を引用するものであり、本件補正後の請求項1の従属項であるのみならず、請求項2ないし7の従属項でもあること、本件補正後の請求項1は、本件補正後の請求項2ないし7の発明特定事項を含むものではないことからすると、本件補正後の請求項8は、本件補正において、本件補正前の請求項1と一対一で対応する請求項に該当しないのはもとより、これに準ずるような対応関係に立つものと認めることはできない。
 本件補正後の請求項8は、本件補正前の請求項10の発明特定事項から、「・・・」との構成を削除した請求項であるところ、この削除によって、本件補正前の請求項10の発明特定事項を限定したものと認めることはできず、かえって、本件補正前の請求項10に係る発明を上位概念化したものといえるから、補正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められない。

 

【コメント】
 いわゆる増項補正が特許法17条の2第5項2号が規定する限定的減縮を目的とする補正に該当し得るか否か、については、平成17年4月25日の東京高裁平成17年(行ケ)第10192号判決が示した「補正前後の請求項に係る発明が一対一の対応関係にあることを必要とすると解するのが相当である。」旨の判示に従い、該当し得ないとする見解が優勢であったように思われる。審査基準においても、「請求項数を増加する補正」は、「n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更する補正」や「択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正」を除いて、特許請求の範囲を減縮する補正に該当しないとされている。本判決も増項補正を認めたものではないが、上記下線部の判示は、いわゆる増項補正であっても認められる余地があることを示したものと解される。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)

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