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特許 令和3年(行ケ)第10091号「粘着テープ及びその製造方法」(知的財産高等裁判所 令和4年5月11日)

11月2日(水)配信

 

【事件概要】
 本件は、特許異議申立事件において、「特許第6624480号の請求項1、3~4、6及び8~9に係る特許を取り消す。」とした決定が維持された事例である。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 主な争点は、発泡体層1の一方の面側から粘着部2を観察した際の粘着部2の形状が、本件発明においては「略円形状、略四角形状または略六角形状」である点が容易か否かである。

 

【結論】
 甲1発明の感圧接着剤非配置部の帯状部分が「波状パターン」であることについて、甲1には、「波状の例」として「サインウェーブや疑似サインウェーブ、円弧波等の曲線状のものや、ジグザグ状、三角波等の非曲線状のものが挙げられる」こと及び「波状パターンは、同形または異形の2種以上の波をそれらの位相をずらした状態で、あるいは形状やパターンを反転させる等して、重ねて形成されたものであってもよい」ことが記載されており、そのような形状の感圧接着剤非配置部の帯状部分に囲まれた感圧接着剤配置部は、「略円形状」又は「略四角形状」というべき形状になり得るものと解される。また、甲1発明は、空気だまり等によって外観品質の低下や接着力の低下がもたらされることを防ぐことを課題とするものであるところ、気泡等による外観品質の低下や接着力の低下を防止するために、粘着剤層における粘着剤部分の形状を円形状、四角形状、六角形状とすることは、周知の技術であったと認められる。以上によると、甲1の記載及び周知技術を踏まえ、甲1発明において上記相違点に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得ることである。

 

      (本件発明)             (甲1発明)

 

【コメント】
 原告は、甲1発明は、「帯状部分」の「感圧接着剤非配置部」を設けることを技術的特徴とする発明であること、そこでは、気泡は特定の溝の方向に沿ってのみ除去され、その方向は自ずと溝の形状、配置により決定されるもので、波状パターンの「感圧接着剤配置部」を島状の「略円形状、略四角形状または略六角形状」に変更する動機付けはなく、当該変更をするともはや甲1発明の効果を奏し得なくなるから阻害要因があると主張したが、判決は、甲1発明は、前記の点を課題とするものであるところ、当該課題の解決のためには気泡が除去されることが重要なのであって、それが特定の溝の方向に沿って除去されることはそのために選択された手段にすぎず、甲1の記載自体から、「波状パターン」の形状を変更する動機付けがあるといえ、それにより感圧接着剤配置部が「略円形状、略四角形状または略六角形状」というべき形状になり得ると認められるにもかかわらず、当該変更をすると甲1発明の効果を奏し得なくなるというべき事情は認められないとして原告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)

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