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特許 令和3年(行ケ)第10133号「回転子積層鉄心の製造方法」(知的財産高等裁判所 令和4年9月7日)

12月21日(水)配信

 

【事件概要】
 特許無効審判の請求を不成立(特許維持)とした審決が、維持された事例。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 分割出願である本願が分割要件を満たしているか否か(最初の親出願の明細書等に、「かしめ部・逃げ空間なし構成」が記載されていたといえるか否か)。

 

【結論】
 ・・・の各記載事項を踏まえると、最初の親出願の出願日である平成17年1月12日当時の技術常識として、磁石が挿入される回転子積層鉄心における積層の固定方法は、かしめを用いるものに限られておらず、溶接や接着も選択肢として存在していたことが認められる。
 最初の親出願の明細書中、発明が解決しようとする課題等において、かしめ部・逃げ空間あり構成に係る事項が特に取り上げられて深く検討されているとしても、そのことから直ちに、最初の親出願の明細書等に記載された発明が上記構成を含むものに限定されるものではない。
 最初の親出願の出願当時、固定手段として溶接や接着も選択肢として存在していたことが認められるのであるから、同明細書等における記載もそれを前提に理解すべきものである。そして、最初の親出願の明細書に記載されていたといえる本件発明1に係る構成や、当該構成における上板部材及び下板部材による回転子積層鉄心の上下からの押圧並びに樹脂ポット内の樹脂の磁石挿入孔への充填といった機序自体が、かしめ部あり構成であるか、かしめ部なし構成であるかによって影響を受けるものともみられない。
 そうすると、最初の親出願の明細書等には、①本件発明1を含む発明が記載された上で、②かしめ部あり構成の場合に当該発明を用いる際の問題点等について、逃げ空間あり構成などが更に記載されているというべきであって、上記②の記載の存在によって上記①の記載が存在しないものとはいえないところである。

 

【コメント】
 原出願明細書等に記載された構成の一部(上位概念)を抽出してクレームした分割出願にはしばしば遭遇する。そのような分割出願においては、クレームの全ての構成要素自体が原出願の明細書等に記載されていることは明らかであるが、構成の一部のみを抽出した発明が原出願明細書等に記載されていたといえるか否かは、かならずしも明らかではない場合がある。本件もその点が争われた事例の一つといえ、そのような場合の分割の適否を考える際の参考になると思われる。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)

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