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特許 令和4年(行ケ)第10098号「茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを具えた茶刈機」(知的財産高等裁判所 令和5年4月20日)

8月23日(水)配信

 

【事件概要】
 本件発明1及び7と甲1発明との一致点及び相違点の認定に誤りはなく、新規性及び進歩性の判断に誤りはないとして、特許無効審判請求に対する不成立審決が維持された事例。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【主な争点】
 甲1発明の認定誤りに起因する一致点及び相違点の認定誤り。

 

【結論】
 原告は、本件審決は、本件発明1と甲1発明が、「負圧吸引作用を奏する背面風(W)を前記刈刃(22)の直後方から移送ダクト(6)に送り込むこと」で一致していることを看過したと主張する。…
 しかし、甲1の…記載は、…刈刃34が摘採機フレーム基盤32の「前方ほぼ延長上に設けられる」と示すにとどまり、摘採作用部36と刈刃34の位置関係について具体的に特定するものとはみられない。また、…「摘採作用部36たる刈刃34後方部」という部分において、摘採作用部36が刈刃34の後方に位置することを示しているものの、摘採作用部36が刈刃34の後方のどの程度の距離にあるものか等について、具体的に示すものとはみられない。…
 したがって、甲1発明について、送風ダクト52からの吹出口が刈刃34の「直後方」から風を送り込むものであることが認められるべき旨をいう原告の主張は、採用することができない。
 次に…摘採された茶葉は、まず、送風ダクト35から排出される風によって摘採作用部36の後方に送られ、次いで、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風により茶葉移送路52a内を上昇移送されるのであって、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風に負圧吸引作用がなくとも、送風ダクト35から排出される風により、上昇移送が可能となる位置まで茶葉が送られることは容易に理解される。…
 したがって、甲1発明について、送風ダクト52を介して吹き上げファン51から吹き出された風が「負圧吸引作用を有すること」が認められるべき旨をいう原告の主張は、採用することができない。…
 本件審決が認定した一致点及び次の相違点1が認められるというべきである。

 

【コメント】
 裁判所は、「送風ダクト35から排出される風によって茶葉を摘採作用部36の後方に送る甲1発明について、「負圧吸引作用を奏する・・・風のみ」を「刈刃・・・の直後方から・・・ダクトに送り込む」という構成を採る動機付けとなる記載も、これを示唆する記載も、甲1には見当たらない。」などとして、相違点1に係る本件発明1の構成を採ることは容易でないと判示した。また、本件発明7についても、本件発明1と同様な理由により、一致点及び相違点の認定、新規性及び進歩性判断の誤りはないと判示した。
 判示されているように、甲1の明細書及び図面には、原告が一致点であると主張する事項を裏付ける具体的な記載がなく、原告主張には無理があったように思われる。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 和田 雄二)

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