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11月24日
6月26日(水)配信
【事件概要】
この事件は、特許無効審判の請求を認容した審決の取消しを求める事案である。
裁判所は、原告の請求を棄却した。
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【争点】
特許無効審判手続において、審決をせずに再度審決の予告をすべきであったか否か(手続違背の有無)。
【結論】
上記「経済産業省令で定めるとき」として、特許法施行規則50条の6の2が規定されている。同条3号は、…旨規定する。この規定によれば、先に行われた審決の予告までに当事者が申し立てた理由のうち、当該予告において判断が留保され又は有効と判断された理由につき特許を無効にすべきものと判断する場合のように、「当該理由により審判の請求を理由があるとする審決の予告をしていない」場合は、実質的に訂正の機会が与えられなかったものであり、再度の審決の予告をしなければならない。他方、そうでない場合、すなわち、先に行われた審決の予告と実質的に同じ内容の理由により特許を無効にすべきものと判断する場合のように、実質的に訂正の機会が与えられていた場合は、審判長は、更に審決の予告をする必要はないものと解される。…。
本件審決と第2予告がそれぞれ認定した本件訂正発明の解決しようとする課題は、表現こそ異なるものの、実質的には同じ内容を意味するものと理解される。以上によれば、サポート要件との関係では、サポート要件違反により審判の請求を理由があるとする第2予告の後、原告には実質的に訂正の機会が与えられたものといえるから、更に審決の予告をすべき場合には当たらない。
…、引用発明1Aと甲1の2発明については、本件審決では式(N-a)の化合物を含むのに対し、第2予告ではこれを含まない点その他の点で、液晶表示素子に係る混合物を構成する重合性液晶組成物の一部が相違する。しかし、甲1を主引用例として認定された引用発明に基づき、新規性又は進歩性が欠如するとの無効理由により審判の請求を理由があるとする第2予告により、上記無効理由に関しては、実質的に見て原告に訂正の機会が与えられたものといえる。よって、新規性及び進歩性との関係では、第2予告の後更に審決の予告をすべき場合には当たらない。
以上のとおり、本件審決は、第2予告をしたときまでに当事者が申し立てた理由で、当該理由により審判の請求を理由があるとする審決の予告をしたものを判断の対象としたものであり、「当該理由により審判の請求を理由があるとする審決の予告をしていないとき」に該当しないから、第2予告の後更に審決の予告をしなければならない場合には当たらない。
【コメント】
原告は、「第2予告における引用発明が本件審決において別の発明にすり替わって」いる旨主張したが、裁判所は、「本件審決における引用発明1Aと第2予告における甲1の2発明とで相違があるとしても、実質的に見て、第2予告により原告には訂正の機会が与えられたものといえる」として、原告の主張を採用しなかった。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 吉住和之)
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