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特許 平成30年(行ケ)第10036号「IL-17産生の阻害」(知的財産高等裁判所 平成31年3月19日判決)

7月31日(水)配信

 

【事件概要】

 無効審判事件において新規性ありと判断した審決が維持された事例。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

 有効成分(IL-23アンタゴニスト)および医薬用途(乾癬治療等)の共通する甲5発明に対して、新たな作用機序を発見した本件特許発明1は新規性を有するか。

 

【結論】

 本件特許発明1における「T細胞によるインターロイキン-17IL-17)産生を阻害するため」という用途は、IL-23によるT細胞の処理によってT細胞におけるIL-17の産生が増加するという知見に基づき、IL-23によるT細胞の処理により引き起こされるIL-17の産生を阻害することを用途とするものであり、上記知見は、従来から知られていたTh1誘導やTh2誘導によるT細胞刺激とは異なるものであると認められる。

 したがって、本件特許発明1における「T細胞によるインターロイキン-17IL-17)産生を阻害するため」という用途は、従来から知られていたTh1誘導によるT細胞刺激とは異なる、IL-23によるT細胞の処理により引き起こされるIL-17の産生を阻害することを用途とするものであるから、甲5発明の「T細胞を処理するため」とは明確に異なるものであり、相違点5は、実質的な相違点であると認められる。

 

【コメント】

 上記争点に関しては「新規性なし」というのが一般的な解答であるが(審査ハンドブック附属書B第32.2.23-2-1)(d))、無効審判請求人による、『甲5X発明に係る抗体含有組成物の用途は、「T細胞の処理による乾癬治療」であるが、乾癬患者について・・・実施すると、当然に、「T細胞によるインターロイキン17IL-17)産生阻害」も生じる』、との指摘に対しては、『慢性関節リウマチの患者であってもIL-17濃度の上昇がみられなかった者がいるように(甲17〔審判乙1〕)、すべての炎症性疾患においてIL-17濃度が上昇するものではないし、特定の炎症性疾患においてもすべての患者のIL-17濃度が上昇するものではない、・・・本件特許発明1の組成物を医薬品として利用する場合には、特にIL-17を標的として、その濃度の上昇が見られる患者に対して選択的に利用するものということができる』、と判示して、新たな作用機序に基づく患者群の選択に新規性を見出している。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 田村明照)

 

書誌等(裁判所ウェブサイトまたは知的財産高等裁判所ウェブサイト

 

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