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11月24日
9月18日(水)配信
【事件概要】
明確性要件およびサポート要件に適合しないと判断した拒絶査定不服審判の審決が取り消された事例。
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【争点】
脂質含有配合物の選択方法に係る発明における、①「対象の一つ以上の要素(筆者注:年齢、性別等)の、前記対象への投与のための脂質含有配合物を選択するための指標としての使用」との発明特定事項Aが明確か否か(明確性要件)、②「ω-6の増加が緩やかおよび/またはω-3の中止が緩やかであり、かつω-6の用量が、40グラム以下であり」との発明特定事項Gが、「発明の詳細な説明に記載したもの」か否か(サポート要件)。
【結論】
①脂質含有配合物を対象に投与するに当たり、年齢、性別等の対象の要素をメルクマールにして、その脂質含有配合物の構成を決定すれば、要素を「指標として」使用したといえる。また、これにより決定される脂質含有配合物の構成がありふれたものであったとしても、ありふれていることを理由に発明の外延が不明確であると評価されるものではない。そうすると、「指標として」という記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるということはできない。
②発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて、何ら検討することなく、選択関係にある特定事項EないしHのうち特定事項G「・・・」との技術的事項が、本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていないことの一事をもって、サポート要件に適合しないとした本件審決は、誤りである。
【コメント】
①明確性要件は、「第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である」という程度に著しく不明確な場合に限って、その要件違反が問われるものであることが判示された。
②特許法36条6項1号には、「発明の詳細な説明に記載したもの」と規定されているものの、文字通りの意味の検討だけでなく、「当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて」も検討を加える必要がある。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 田村明照)
書誌等(裁判所ウェブサイトまたは知的財産高等裁判所ウェブサイト)
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