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1月19日
9月25日(水)配信
【事件概要】
容易想到性の判断に誤りがあるとして、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨判断した拒絶査定不服審判の審決が取り消された事例。
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【主な争点】
相違点2及び3に係る本願発明の構成を容易に想到することができたか否か。
【結論】
引用発明と引用例2記載の遊技機は、共に遊技球を流下させるルートが複数あり、そのうち片方のルートに遊技球を発射させた方が有利となる状態がある遊技機において、上記有利となる状態となった場合にその有利な方向の遊技領域に遊技球を発射することを促す報知を行うことに関する発明又は技術である点において、技術分野が共通しているといえるが、他方で、引用発明では、遊技者が可変入賞装置の入賞口(大入賞口)の開放前に、大入賞口が開放されるまでの特定の時間を報知装置により予告(報知)することにより、有利な方向の遊技領域に遊技球を発射することを促すものであるのに対し、引用例2記載の遊技機は、遊技者が有利な方向(正しい方向側)の遊技領域に遊技球を発射させる発射操作を行っているにもかかわらず、たまたま少量の遊技球が誤った方向側の遊技領域を流下したとしても誤差として判定し、正しい方向側の遊技領域に遊技球を発射することを促す発射操作情報の報知を行わないようにしたものであり、報知の目的及びタイミングが異なるものと認められる。…そうすると、引用例1及び引用例2に接した当業者は、大入賞口が開放されるまでの特定の時間を報知装置により予告(報知)する引用発明において、報知の目的及びタイミングが異なる引用例2記載の遊技機の構成を適用する動機付けがあるものと認めることはできない。
【コメント】
本件は、本願発明と主引用発明との間の相違点に係る構成の全てが副引用例(引用例2)に記載されており、主引用発明と副引用例の技術分野も共通していた事案であるが、それだけでは容易想到とはいえない場合があることを示す事案といえる。審査基準にも「『技術分野の関連性』については、他の動機付けとなり得る観点も併せて考慮しなければならない。」と記載されているが、本件審決は、その審査基準に沿った検討を怠った結果、取消に至ったもののように見える。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳満昭)
書誌等(裁判所ウェブサイトまたは知的財産高等裁判所ウェブサイト)
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